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東京・練馬。配置薬業「三山薬品」から歩いてすぐの場所に、「タイレストラン マライ」というタイ料理店がある。運営にあたるのは、三山薬品社長・スライ富士子さんの夫、タイ人のスライ・ジャトロンカモンさんだ。
タイでは生まれた子にニックネームをつける文化があり、家族からは「ジャック」と呼ばれている。ここからは、ジャックさんとお呼びしたい。
ジャックさんは、富士子さんと共に三山薬品を継ぐはずだった。ところが、勤めていた名古屋のトヨタ自動車(以下、トヨタ)を辞め、入社することを決めて社員に紹介されたその日、富士子さんの父が倒れて帰らぬ人となった。
跡を継いだ義母は、ジャックさんが会社にいることを認めなかった。
トヨタに戻る道はあった。だがジャックさんは、三山薬品の近くにタイ料理店を開く。理由は「年を取ったお義母さんを、近くで見ていたほうがいい」。自分を会社から追い出した相手のために、である。
なぜそこまでできるのか。二人の30余年をたどると、その答えが見えてくる。
一家でタイに移住、「男女平等は日本より先」だった
スライ夫妻は結婚して長男が生まれた後に、タイで暮らしていた時期がある。ジャックさんが、「タイに戻りたい」と相談したことがきっかけだった。


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