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TOEFL会場での一言からはじまった
「日本人なの? 聞きたいことがあるから、テストが終わったら待っててくれる?」
23年前の2003年4月、イギリス・ロンドン。英語の試験であるTOEFLの試験会場。珠緒さんが試験前の手続きでパスポートを出したところ、ふいに後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこにはスーツ姿でスポーツバッグを持った男性が立っていた。その人がジェロームさんだった。珠緒さんは訝しく思いながらも、試験後に落ち合うと、ジェロームさんは珠緒さんにこう話した。
「日本語を勉強したいんだけど、どこで勉強すればいいか知りたい。でも、今日はあまり時間がないから連絡先を教えてほしい」
珠緒さんは少し警戒していたので、電話番号ではなくフリーメールのアドレスを伝えた。ジェロームさんに対しては、「ちょっと変わったフランス人の男性だな」と思った。
二人は共に23歳。年齢こそ同じだったが、ジェロームさんは都市で暮らす投資銀行のビジネスパーソン、珠緒さんは郊外に住み、大学院で美術史を学ぶ留学生だった。仕事も住んでいるエリアの共通点もなく、テスト会場でジェロームさんが声をかけなければ、二人の人生が交わることはなかっただろう。
ジェロームさんに珠緒さんになぜ声をかけたのか聞くと、にこっと微笑みながら「彼女がかわいかったから」と実にシンプルな答えを返してくれた。


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