一方、投資銀行で働くジェロームさんにとっては、作品の横に値段が並ぶオークションハウスは「美術品がマーケットとして動いている現場」として興味深かった。美術史を学ぶ珠緒さんと、金融の目を持つジェロームさん。同じ場所で二人は別々の面白さを見出していた。
実は、この経験がきっかけとなり、ジェロームさんは現代美術のコレクターへの道を歩み始めることになる。日本のブロンズ彫刻をロンドンのクリスティーズに出品したこともある。今では、二人でアートフェアやギャラリーに足を運ぶことも多く、珠緒さんが美術館の学芸員の経験からアドバイスをすることもあるそうだ。
海外経験ゼロ、伝統工芸職人の父はどう迎えたか
2003年冬。二人が付き合い始めて半年ほどが経った。ジェロームさんとの仲が深まっていたこともあり、珠緒さんは両親に紹介することにした。珠緒さんは留学中も年末年始には日本に帰国していたのだ。
事前に外国人の彼氏を連れていくとは伝えたものの、実際に会わせてみたらどんな反応が返ってくるだろうか。珠緒さんの不安と緊張は募った。
しかし、両親は拍子抜けするほどあっさりとジェロームさんを受け入れた。
「実は、妹もハワイに留学していて、外国人の彼氏を実家に連れてきていました。両親は『珠緒も外国の人と付き合っているんだね』という感じで、あまり驚いていませんでしたね」
珠緒さんの父は、「海外留学に出した時点で、娘たちは自分の理解をこえた世界に行くと思っていた。遠く離れていると助けてあげることもできないから、それぞれの道を行ってくれればいい」と話していたそうだ。
ジェロームさんは、珠緒さんの実家近くのウィークリーマンションに滞在し、お正月を一緒に過ごした。珠緒さんの実家はお正月には着物を着て、おせち料理を食べるという、伝統的な行事を大事にしている。日本らしいお正月を一緒に過ごせたことは、ジェロームさんにとっても印象的な思い出だという。


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