二人はメールでやり取りを重ねる。日本語に関して熱心に質問をするジェロームさんのメッセージに、「どうやら本当に日本に興味があるようだ」と思った珠緒さんは、少し警戒心を緩め、1週間後にディナーに行くことにした。
共通点ゼロで、初デートの会話が弾んだ
デート当日にジェロームさんが珠緒さんを案内したのは、カジュアルなフレンチビストロだ。「リトル・フランス」ともいわれるサウスケンジントンという街にあり、フランス人のウェイターが料理をサーブし、店内にはフランス語が飛び交う。「珠緒さんにフランスの雰囲気に触れてほしい」と考えたお店選びだった。
共通点のまったくない二人だったが、不思議なほど会話は盛り上がった。
その日、ジェロームさんが話したテーマは宗教だ。無宗教だけれども宗教に関心があり、三大宗教だけでなく儒教に関する本まで読んでいた。さらに、珠緒さんの専攻である美術史についても、ジェロームさんは一定の知識を持っていた。
「日本では美術史に関心のある人は少なくて、なかなか話す機会がないんです。でも、フランスでは教育として美術史を学ぶ機会があるそうです。彼と話していると、異文化の入り口に立ったような気がして、また会ってもいいかもしれないと思いました」
ジェロームさんも同様に、「自分はなじみの深いヨーロッパの美術史を、専門で学んでいる珠緒さんの視点が面白かった」という。
知的好奇心の高い二人が惹かれ合い、恋人同士になるまでに時間はかからなかった。
出会ってから1カ月も経たないうちに二人は付き合いはじめ、数カ月後の7月には、ジェロームさんは自分の実家のあるフランスのアルザスに珠緒さんを連れていった。ジェロームさんの両親は、一緒にバーベキューをして、珠緒さんを温かく受け入れた。


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