クレアさんは、幼稚園からフランス系の学校である「リセ」に通っている。その理由は、日本で生まれ育つ娘に、フランスのルーツに触れる環境を用意した方がいいと夫妻が考えたからだ。
現在、高校1年生の娘はフランス語、英語、日本語を話すことができる。
「学校がフランス系なので一番流暢に話せるのはフランス語です。娘を見ていると、個人のアイデンティティは学校で育まれるのだと感じます」とジェロームさんは話す。
「どちらの国でも外国人扱い」娘が抱える葛藤
日仏のミックスであるクレアさんは、日本に住む中で窮屈さを感じる場面も多いという。
二重国籍で日本国籍をもっているが、エキゾチックな顔立ちであるため、事情を知らない人からは「日本語がうまいね」と言われ、外国人扱いされることが多い。フランスに行ったら行ったで、アジア系の顔立ちに見えるため「フランス語がうまいね」と言われるそうだ。
「どちらの国にいても、その国の人ではないように扱われる居心地の悪さがあるようです」と珠緒さんは言う。
そんな娘さんのバランスが取れていたのは、ジェロームさんの仕事の都合で一家が香港で暮らしていた時期だったという。多国籍の環境の中では、フランス人でも日本人でもあることが自然に受け入れられていたからだ。娘の今後の進路は未定だが、日本でもフランスでもなく、英語圏の大学へ留学する可能性もある。娘がどんな選択をしても、二人は見守っていくという。
取材をしたのは日曜の午前中だった。夫妻の20年にわたるお話を聞いていたら、あっという間に時間が過ぎ、昼時に近づいていた。玄関まで見送ってくれた二人は、夕方に、珠緒さんの実家でみんなでお寿司を食べる予定だと話していた。
人の縁とは不思議なものだ。あの日、試験会場でジェロームさんが珠緒さんに声をかけなければ、今の二人はなかった。そして、その縁が確かな絆になったのは、前編で二人が語った、お互いを理解するために絶えずコミュニケーションを取り続けてきたからなのだろう。


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