そして、喧嘩をしたときにも挨拶だけはちゃんとするそうだ。空気が重いときでも、ジャックさんは「いってきまーす!」と元気に挨拶する。そのたびに、富士子さんは「先手を取られた」と思うそうだ。
富士子さんに、夫婦円満の秘訣を聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
「お互いにパーフェクトな人間じゃないけど、そこを許し合うことですよね。私は料理を作るのが得意ではないけど、彼は何を作っても『おいしい、おいしい!』と食べてくれます」
再び涙を見せて、こう続けた。
「私にとって、彼は空気のような存在。いてくれて当たり前だし、いなくては困ります。子供が巣立つ前は、夫婦二人に戻ってやっていけるかなと思ったこともありましたけど、子育てでも、母の介護でも助けてもらいました。これからもお互いに健康で長生きして、支え合っていきたいです」
ジャックさんは、富士子さんについて「一緒にいると楽しいから、いてくれないとだめなんだよね」と語った。
「嫉妬を感じることもある」夫の胸の内
仲睦まじい二人だが、ジャックさんにも胸の内はある。
「この家は彼女の実家だし、彼女が会社のリーダーをしていることに嫉妬を感じることもあります。もともと僕はリーダー気質なので、それがもどかしいと思うこともありました」
富士子さんは結婚するときに「私と結婚したせいで、何かができなかったという人生にしてほしくない」とジャックさんに伝えたという。
「うちの両親が家業をやっていたこともあり、喧嘩する場面をよく見ていました。母がお父さんのせいで、という話をよくしていたので、それを反面教師にしています。だから、私はジャックさんがタイに帰りたければ、一緒に帰ってもいいと思ってるんです」
家業を継ぐはずだった夫と、継いだ妻。その関係は、そもそもどう始まったのか。後編では、二人の出会いと日本の家族の大反対、そして役所に「前例がない」と拒まれた結婚までを聞く。


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