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「作り直してこいッ!!」『美味しんぼ』新アニメ化に立ちはだかる"コンプラの壁"…海原雄山のカスハラをどう"料理"するのか

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旧テレビアニメ『美味しんぼ』では主人公の父・海原雄山が周囲の人を怒鳴りつける場面が多く描かれていた
旧テレビアニメ『美味しんぼ』では主人公の父・海原雄山が店の料理人や店員、周囲の人を怒鳴りつける場面が定番だった(画像:YouTube「美味しんぼ公式チャンネル」より)
  • 城戸 譲 ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー
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もう一つの懸念が、「コンプラ意識の違い」だ。原作の連載開始は40年以上、アニメ旧作も30年以上前となる。言葉遣いも、働き方も、あらゆる価値観が変わった。しかも公式は、新作で「’90年代の空気感はそのままに」するとしている。イントロダクションでも、舞台は“熱気と活気に満ちていた’90年代”と明記された。時代設定を当時のままにする以上、当時の言動をどこまで再現するかは、いっそう難しい判断になる。

舞台となる新聞業界にも、大きな変化が起きている。発行部数が右肩下がりになる現在では、バブリーな「究極VS至高」対決を定期的に行えるような財力を、新聞社はもはや持ち得ない。さらに、海原雄山や山岡士郎を見ていると、今ではハラスメント行為だと認定されかねない言動が少なくない。いくつか実例を見てみよう。

たとえば「ダシの秘密」の回では、雄山が料亭の吸い物や煮物に腹を立て、おかみに「まるでなっとらん、作り直してこいッ!!」と怒鳴りつける。これはカスハラ(カスタマーハラスメント)と言われても仕方ない行為だ。「幻の魚」では、雄山が食の知識を欠く同席者を、猿になぞらえて侮辱する。こちらはモラハラ(モラルハラスメント)を想起させる。

「幻の魚」では、食の知識を欠く同席者を、雄山が猿になぞらえて侮辱する(画像:YouTube「美味しんぼ公式チャンネル」より)

当の雄山役・大塚明夫さんも、この点を自覚している。キャスト発表に寄せたコメントでは、今の目で見る雄山を「ちょっと引くくらいオレ様大王」と評し、「現代のコンプラとも闘わなきゃならない大変な役」と語った。さらに「どこまで過激な表現ができるかはわかりませんが、過激であることが目的じゃない」とも述べている。演じる側も、令和の視聴者との距離感を意識しているのだ。

こうした表現をどうするのか。その扱いには、すでに前例がある。

旧アニメには、再放送や配信で扱われない、いわゆる“欠番”エピソードが存在している。『美味しんぼ』も、公式YouTubeチャンネルが配信しているのは全121話だが、テレビではそれ以上の話数が放送された。第48話「非常食」も、諸般の事情でいったん公開が中止され、2025年1月の一挙配信で期間限定公開されたという経緯がある。

第48話「非常食」は、山岡たちが吹雪の中、別荘に閉じ込められる物語だった(画像:YouTube「美味しんぼ公式チャンネル」より)

欠番の理由は公式には明かされていない。ただ、30年以上前の作品を届け直す過程で、すでに“見せ方”の取捨選択が行われてきたことはうかがえる。新作となれば、その判断は配信の可否ではなく、描写そのものに及ぶことになる。

山岡の“みそ汁ダメ出し”も今はネタでは済まない

一方の主人公 山岡も、振る舞いに問題がある。たとえば、遅刻や欠勤は当たり前のキャラクターにもかかわらず、他人には厳しい性格だ。自らと合わない価値観を徹底的にこき下ろす節も見られ、たとえば、Macユーザーである山岡がWindowsに対して「そんなもの使う奴はマゾヒストだ」と猛批判する場面もあった。

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