赤の他人同士で気兼ねなく語り合う中で、「いいな」と思ったことがある。「女性に頼られたい」と思っている割には頼りがいのない男性が多いと祥子さんが言ったところ、これから海外で英語を学ぶ予定だという智弘さんは、「僕は頼られたいとは思っていないです」と返してきた。
10歳年上の祥子さんは「身の丈がわかっている若者だな」と少々上から目線で感じたと笑う。
「付き合った人とのデートコースもすべて自分で決めずに話し合うそうです。ただし、行き先に困ったときの案はいくつか用意しておくと聞いて、私には理想的な人だなと思いました。36歳になって彼のような男性を初めて知ったんです」
生まれ育った場所も世代も異なるのが、お互いに新鮮だったのかもしれない。智弘さんは、語学研修中の海外でも、毎日LINEを送ってくれるようになった。おかげで祥子さんはずっと安心していた。智弘さんが、「いつまで海外にいるかわからないので、付き合おうなんて言えません」と率直に伝えてくれたのもよかったらしい。
付き合っていない彼という「都合がいい存在」
「私はそろそろ結婚したいと思っていたので、地元でもいろいろ手を伸ばしていました。言葉を選ばずに言えば、海外にいて毎日連絡できるけれど、付き合っているわけではない彼は都合がいい存在だったんです」
「都合がいい」と言い切れるのは、2人が付き合っていなかったからだ。恋人ではない相手だからこそ、祥子さんは地元で結婚相手を探す手を止めずにいられた。それでも、直接会ったのは一度きりの智弘さんへの想いは募るばかりだった。
「このままでは関係性が続くわけがない」と焦った祥子さんは、彼が英語研修中のフィリピンまで会いに行き、2泊3日をともにした。
「帰りは空港までバイクで送ってくれたのですが、スコールでびしょ濡れに。彼は心配してくれたけど、私は『韓国ドラマのワンシーンみたい!』と内心盛り上がっていました」
一時帰国後は智弘さんが祥子さんの地元まで遊びに来てくれた。次はワーキングホリデーでオーストラリアに行くという。出発の日には、祥子さんが成田まで見送りに行った。


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