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「パイは男性にしか作れない」を変えた、1人の女性
サクサクの食感、舌の上でほどよく溶ける砂糖の甘み、咀嚼のたびに鼻から抜けていくバターの風味。あと1本、もう1本、これで最後……と、つい手が伸びる定番のお菓子「うなぎパイ」は、静岡県浜松市に本社を構える1887年創業の老舗、春華堂の売上の7割を占める看板商品だ。1961年の誕生から65年。自社工場で1日20万本という大量生産を実現しながら、パイ生地は職人の手づくりによる製法を守り続けている。
うなぎパイの製造工程は大きく3つに分けられ、全工程で職人が携わる。
まずは「仕込み」。原材料となる小麦粉やバター、砂糖、水、うなぎエキスを混ぜ合わせ、ミキサーで練る。練った生地は、約1000層になるまで伸ばしては折りたたむ作業をくり返す。仕込んだ生地を一晩寝かせたら、「仕上げ」とよばれる工程に移る。伸ばした生地に粒子の大きい特注のグラニュー糖をまぶし、折り重ねていく。
約9000層になるまでたたんだら、「焼き上げ」に移り、全長12mの窯でじっくり焼き上げていく。この「伸ばして、折り重ねる」作業を担うのは、職人の手とめん棒だ。
春華堂には現在、約50人のうなぎパイ職人が在籍している。2014年から「師範制度」とよばれる階級制度を導入し、職人の技術継承にも取り組んでいる。階級は4つあり、錬士、範士、宗家、師範へと上がっていく。トップの師範は1人のみ。
テクニックだけでなく、体力、気力、忍耐力が要求される世界だ。だから62年間、男性だけの職場だった。そんな前提を覆し、最初の階級である「錬士」として腕を磨く清野麻由美さん。なぜ、道を切り開くことができたのだろうか。


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