春華堂が求人を出したのは、職人不足の問題に直面していたからだ。2020年の新型コロナウイルス感染症の影響で人の流れが止まり、お土産需要が激減。売上減少に伴い、工場の生産ラインを止めざるを得ない日もあった。先の見えない状況に不安を感じ、退職を選ぶ職人も少なからずいた。
2023年、新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことをきっかけに生産量を増やす方針に転換したものの、職人の数が足りない。同社で唯一の師範、清瀧貴之さんは、当時についてこう振り返る。
「人が少ない状態で生産量を増やしても、皆の体力が持たない。それで、門戸を広げて職人の数を増やそう、女性でもやりたい人がいるならやってもらおうよという話が持ち上がったんです」
5kg以上の生地玉に、全体重をのせる
なぜ、これほどまで「うなぎパイ職人は女性に難しい」とされてきたのか。答えは、生地に触れるとわかる。
仕込みで職人が向き合うのは、5kg以上の生地の塊(生地玉)だ。生地を練り、最初の数回こそ大型ローラーを使うものの、そこからはすべて手作業だ。つま先立ちになり、めん棒に全体重をのせて伸ばし、折りたたむ。生地を均一に伸ばす機械「パイローラー」にかけてならした後、また伸ばして、折りたたむ。
この作業を約1000層になるまでひたすらくり返す。平常時は800玉以上、繁忙期はその1.5倍の量の生地玉を数人で仕込む。
それだけではない。続く「仕上げ」では、生地に砂糖をまぶしながら、めん棒で伸ばしては折り重ねる作業を約9000層になるまでくり返す。生地の状態はバターの固さや生地の乾燥具合などで変化するため、伸ばし方や折りたたみ方もその都度調整がいる。それでいて、1つの生地にかけられる時間は2分程度だ。


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