費用対効果で薬の価格を調整する仕組みが日本で動き出したのは2019年。私はこの分野をずっと専門にしてきた。費用対効果を検証した結果、薬価を下げる結論となることが多いため、残念ながら費用対効果は製薬業界から好かれていない。「薬価を下げてばかり」とみられているからだ。(もっとも、費用対効果の検証を担う仕事が嫌われるのはどこの国でも同じで、そういう役回りだ)
しかし、私は医療の世界に費用対効果の視点は欠かせないと思っているし、製薬が大切な産業であることもよく理解しているつもりだ。そして、費用対効果の徹底と製薬産業の成長は両立しうると私は信じている。
そのうえで、製薬業界やメディアでよく指摘される「日本の薬価は諸外国に比べて安い」という“定説”には疑義がある。都市伝説といえるかもしれない。
比較制度研究の観点から見れば、日本の(費用対効果評価を含めた)薬価制度や医薬品給付のあり方は、国際的に少し特殊だ。もちろん特殊であることは必ずしも悪いことではない。ただ、ことMFNの影響を評価する際は、日本の特殊さが思わぬ副作用を招いている気がしている。平たく言えば、まじめにやっているのに、いろいろと損をしているのだ。
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