そうした仕事の厳しさを考えると、簡単に女性雇用に踏み切れなかった。当時、女性を採用するにあたり、職人一人ひとりの意見を聞くために役員が面談を行ったこともあったという。
「面談でも『女性には大変じゃないか』と話す職人がほとんどだったそうです。でも、たった一人だけ、『僕は女性にもできると思います』と言った職人がいたんです」(同社広報室 髙橋睦美さん)
その職人は、面談を終えて一度退室した後、再び戻ってきて「女性にもうなぎパイ職人はできる」とくり返した。
「体力に自信がない自分にもできたから、女性にも絶対できるはずです」
このひと言が役員の背中を押し、会社全体が女性職人を採用する方向へと動いていった。
職人になるためのチャンスを掴みにいった清野さん。うなぎパイ職人の女性雇用という新たな変革に踏み切った春華堂。両者の挑戦は、この時始まったのである。
初日に離脱、目の前が真っ暗になった
2023年12月、春華堂に入社した清野さんが最初に担当した持ち場は「仕込み」だった。5kg以上の生地玉を約1000層になるまで伸ばしては折りたたむ工程だ。製菓学校で学んだ経験もあり、意気込んで臨んだ初日、気づけば、作業場から離脱していた。
「常につま先立ちで、上から力を込めて生地を伸ばしていくので、作業着の下は汗だくで。突然目の前が真っ暗になりました」
最初はどこに力を入れればいいのか、どう力を込めればいいのかもわからない。先輩職人に教えてもらいながら一心不乱に生地を伸ばすたびに、肩が、首が、足が痛くなる。全身がひどい筋肉痛で、翌日になっても治らない。「このままじゃダメだ」と考えた清野さんが最初に取り組んだのは体力づくりだった。


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