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「初日は突然、目の前が真っ暗に…」「食事量を2倍に」62年間"男の仕事"だったうなぎパイ職人「錬士」に40代女性がなったワケ

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うなぎパイ職人の清野麻由美さん
「うなぎパイ職人は男性の仕事」。その常識を覆した1人の女性がいる(写真:有限会社春華堂)
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「それまでは小食で、朝ご飯を抜く日もあったんです。でも、まずは量をしっかり食べなくちゃと思って、食事量を2倍に増やしました。腹持ちを良くするために、朝からお餅を食べる日もありましたね。お腹いっぱいになるまで食べても、最初のうちは体重が減っちゃって。それでも体力づくりのためと思って続けました」

筋肉をつけるためにプロテインを飲んだり、栄養バランスを考えて酵素ドリンクやサプリメントを取り入れたりもした。目の前の作業についていくために、できることは何でもやった。そうした清野さんの頑張りに応えるかのように、会社は女性職人が働きやすい環境づくりに取り組んだ。

たとえば、作業台。製造室にある作業台は女性には少し高く、生地を伸ばす時に体重を乗せにくいという課題があった。そこで足場に踏み台を敷き、負担なく作業ができるよう調整した。また、清野さんが「仕上げ」の工程を担当する時は、砂糖を入れるボウルや生地を乗せる台を小さくして、滞りなく作業ができるよう整えていった。

踏み台を導入したことで体重をかけて生地を伸ばせるようになった(写真:有限会社春華堂)

「清野さんが入る前は『女性じゃ難しいんじゃないか』という声が大半の意見でしたけど、今思えば、先入観だったんですよね。周りの環境を見直すことで、少しでも負担なく作業できる状態に整えられたんです。大変そうだなと思う時は、その都度清野さんに話を聞いて、少しずつ工夫していきました」(師範 清瀧さん)

変えたのは環境だけではない。師範の清瀧さんは、清野さんが入社する前から職人一人ひとりに声をかけ、「皆で支えていきましょう」「必ず一人前に育てましょう」と呼びかけた。

「僕らの頃は『見て覚えろ』が普通で、先輩の作業を1日中見ているだけなんて日もありました。ですが、時代とともに少しずつ教え方を変えていこうという動きがあって。清野さんが入社してからは、柔らかく伝えようとする職人も増えて、職場全体の雰囲気も変わりつつあります」(師範 清瀧さん)

「そういう次元の世界じゃない」気づいた「師範制度」の壁

春華堂では、同社が定める試験に合格した人をうなぎパイ職人として認定している。それが、冒頭で説明した「師範制度」で、職人を錬士、範士、宗家、師範の4階級に分けている。2023年12月に入社して以来、見習いとして仕事を学んでいた清野さんは、翌年12月、職人の入り口である「錬士」の肩書きを得た。ここから昇格するためには、どのような条件を満たす必要があるのだろうか。

「錬士から範士に昇格するためには、職人に求められるスキルをひと通り習得し、人に教えられるぐらいまで技術を磨く必要があります。技術テストだけでなく、知識テストや360度評価などの指標で総合的に判断して、次の階級に上がれるかを検討します」(師範 清瀧さん)

知識テストとは、年2回行われる試験のこと。うなぎパイの製造工程や技術、原材料の性質、食物アレルギー表示に関わる情報、春華堂の歴史などを網羅した全20問の試験で、職人全員に受ける義務がある。知識テストに合格しないと、当然だが昇格のチャンスは回ってこない。

師範制度では「周囲から尊敬される人間でなければ上に立つことはできない」という考えのもと、360度評価を行っている。上司だけでなく、同僚同士で人となりを評価する機会を設けることで、心・技・体を兼ね備えた人材育成に取り組んでいるのだ。

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