新型コロナウイルスの感染拡大以降、北朝鮮への門戸は固く閉ざされている。しかし意外なことに、あの国の人々が普段食べている日常食に、韓国で出会うことができる。どれも北朝鮮の人たちの歴史と知恵と、そして涙が染みこんだ食べ物だ。
北朝鮮から脱出した、いわゆる「脱北民」が韓国の首都ソウルの郊外で経営している料理店で味わうことができる。私も先日、電車と路線バスを乗り継いで、エピソードが詰まった「脱北食堂」に行ってみた。
今回の目的地は、ソウルの繁華街ではなく、ソウルの西隣の港町・仁川(インチョン)市だ。
ソウル市内からは地下鉄1号線に乗って約1時間の距離である。住所はメモしていたが、途中でどう行くのか分からなくなり、仁川駅前の観光案内所に行ってみた。
担当の女性は「ああ、北韓(北朝鮮)の食堂でしょう」と行き方を、なんと日本語で書いてくれた。どうやら、たくさんの日本人が聞いてくるらしい。
日本人に人気?
教えてもらった通り、仁川駅の地下にエレベーターで降りて、水仁(スイン)・盆唐(ブンダン)線に乗った。地元のローカル線で人はまばら。「蘇萊浦口(ソレポグ)駅」で下車し、さらに路線バスを利用した。
巨大な高層アパート団地群が続く。その中に、目指す食堂「クッカの店」はあった。「クッカ」とは店主の娘さんの名前だそうだ。
ドアを開けるとテーブルが2つ。昼は過ぎていたが、中はほぼ満席だった。なんとなく大豆と唐辛子の香りがする。
見慣れぬ顔の私に対して「ここ、北朝鮮食堂なこと知っているでしょう」と女性の店員さんが念を押してきた。北朝鮮なまりがわずかに残っている。
「それが食べたくて日本から来たんですよ」と答えたが、お客さんたちは、やや警戒した視線を投げかけてくる。一瞬、北朝鮮に迷い込んだような錯覚に陥った。
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