――「5年は異例」といわれていますが、5年あったからこそできたこととは?
霞が関の局長クラスは1~2年でどんどん異動するのが伝統的な人事慣行。もしも慣行どおりに2年任期、23年10月までだったとしたら、TSMCの熊本第2工場への支援決定(24年2月)やキオクシアの北上工場への支援決定(同)、米マイクロン・テクノロジーの広島工場への支援決定(25年9月)まで行き着いていなかった。ラピダスも23年9月の起工式で終わっていた。
日本の弱点である半導体設計をテコ入れするために、ラピダス製チップを使うことを想定した設計プロジェクト(キヤノン、富士通に委託)や、後工程の自動化プロジェクトも、任期が2年過ぎた後だ。次の方が頑張って進めたかもしれないが、時間を与えていただいたことでできたことは多かったのではないか。

これは私の持論だが、任期は長いほうがいい。毎年人事のヒアリングで聞かれるたびに、続投したいとお願いしてきた。在任中の政策展開は任期が終われば次の人に引き継ぐが、それぞれ自分の考えがあるから、進め方や重点の置き方が少しずつ変わり、もともとの構想とは違ったものになったりする。
異動で変化が起きるのは必ずしも悪いことばかりではないが、担当者の変更による方針のブレが政策効果を生みにくくしている側面もあるのではないか。日本の行政システムの大きな課題だと思う。
難しいことに挑戦しなければ道は開かれない
――いちばん印象に残っている案件は。
ラピダスは非常に思い入れがある。記憶に残っているのは、まだプロジェクトが発表になる前、22年のゴールデンウィークに、EUV(極端紫外線)露光装置を独占しているオランダのASML本社を訪ねたことだ。
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