イランとオマーンはホルムズ海峡の通航再開に向け、最終合意になお至っていない。一方、トランプ米大統領は、イランが経済的苦境によって姿勢を軟化させるまで米国は待つことができると述べ、忍耐強く対応する姿勢を示した。
イランのアラグチ外相は、米国との直接協議は現時点で不可能だとの認識を示した。同外相は9日、6月に署名され、短期間しか続かなかった暫定和平合意に米国が違反したとして批判した。
「米国による覚書(MOU)違反が続き、米国が違反を是正しない限り、交渉再開は不可能だ」とアラグチ氏は表明した。イラン国営テレビが報じた。同外相はまた、ホルムズ海峡に航路を設けるオマーンとの合意について「成立は非常に近い」と述べた。
米国は現在「控えめな対応を取っている」
トランプ氏は9日、ニュースサイトのアクシオスの電話取材に対し、米国は現在「控えめな対応を取っている」と述べた。
「われわれはイランと限定的に交渉しているだけだ」とし、「深刻なインフレに見舞われ、資金もないイランの状況をただ見守っている」と語った。トランプ氏はここ数週間、イランへの大規模な空爆を繰り返し警告しながらも、交渉に機会を与えたいとして実行を見送ってきた。
イランの中央銀行によれば、同国のインフレ率は最近、前年同月比77%に達した。
イランは8日、ホルムズ海峡の全面再開の条件として米国に多数の要求を改めて突き付け、圧力を強めた。原油や天然ガスの供給が早期に改善する余地は限られる可能性がある。
ホルムズ海峡の通航問題は、米国とイスラエルが2月下旬に開始した対イラン紛争の行方を左右する重要な要因となっている。合意が成立した場合に米国がどう対応するかは不透明だ。トランプ大統領はここ数カ月、ホルムズ海峡の航行は妨げられることなく再開されなければならないと主張し、海峡の再開が実現しなければイランへの追加攻撃も辞さないと警告している。
合意の実現が見通せない中、中東情勢は9日も不安定な状態が続いた。イエメンの親イラン武装組織フーシ派は、サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコのジザン製油所を攻撃したと主張した。サウジ当局はこれに先立ち、同施設で火災が発生したと発表していた。
バンス米副大統領は、この数日で一定の進展があったとの認識を示した一方、最終的な結果が米国にとって満足のいくものになるかどうかはなお不透明だと話した。
8日のFOXニュースとのインタビューで、「現状はまだ交渉の途中段階だということを、皆に理解してもらいたい」と述べた。その上で、「今回の交渉を通じて、米国が求めるものを得たと納得できるような条件を、イランが提示できるかどうかが問題だ」と語った。
バンス副大統領は、戦争初期にイランがホルムズ海峡に敷設した機雷を撤去する必要があるほか、同海峡を航行する商船を攻撃しないとイラン政府が約束する必要があるとの考えも示した。
さらに「現在取り組んでいるのは、航行する船舶が安全に通過できるよう、実際にどのような航行ルールを整備するかということだ」と述べた。
イラン側「現時点では米国と交渉していない」
一方、米国はホルムズ海峡の管理を巡る交渉に自国も加わっていると繰り返し示唆しているが、イランはこれを否定している。
イラン国営テレビによれば、イランのアラグチ外相は9日、「一部の仲介国が交渉再開に向けた環境を整えようとしている」と明らかにし、「現時点では米国と交渉していない。メッセージのやり取りは仲介国を通じて行われている」と述べたという。
オマーンはXへの投稿で、交渉は「前向きかつ建設的な雰囲気」の中で進展していると説明した。その上で、航行を巡る合意に向けた外交努力への影響を避けるため、ホルムズ海峡での行動を停止するよう呼びかけた。
イラン最高安全保障委員会(SNSC)の事務局長を務めるモハンマド・ゾルガドル氏によると、イラン側の要求には賠償に加え、米国によるイランの港湾への海上封鎖の解除、イラン周辺からの米軍撤収、制裁解除、凍結資産の解放が含まれる。同氏は強硬派として知られる。

ホルムズ海峡の航行は戦争開始以降、おおむね遮断されている。ただ、米軍の支援を受けたシャトル輸送の一環として、一部の船舶は引き続き貨物を運んでいる。多くの船舶は位置情報を送信するトランスポンダーを停止して航行しており、そのため運航状況の追跡が難しくなっている。
原油価格は先週、荒い動きとなった。ペルシャ湾から数百万バレル規模の供給再開につながると見込まれる合意の行方を見極める動きが続いた。北海ブレント先物は1バレル=83ドルを上回って取引を終えたが、週間では3週連続の下落となった。
ホルムズ海峡を巡るいかなる合意も、イランの最高指導者モジタバ・ハメネイ師の承認が必要となる。イラン当局者は、同師の承認を得るには時間を要するとしており、合意の発表が遅れる可能性がある。現時点では、ハメネイ師が現在の案を承認したことを示す兆候はない。
原題:Iran Rejects US Talks as Trump Displays Patience for Hormuz Deal(抜粋)
--取材協力:Salma El Wardany.
著者:Sara Gharaibeh、Patrick Sykes

