これはもちろん、いい人に悪意があるわけではありません。しかしながら、「衝突さえ避ければいい」という選択そのものが、他者には“能動的には周囲に関わらない姿勢”として映るため、ズレが広がっていくことを避けられません。
いい人は構造的に変わりにくく、よって好かれにくい
この構造は「Lose-Win」の典型です。スティーブン・R・コヴィー博士が提唱した6つのパラダイムでは、いい人は「Lose-Win(自分が負けて、相手を勝たせる)」状態に陥りやすいとされています。
一見、「優しい人」「調和的な人」に見えますが、Lose-Winの本質は「自分を犠牲にして、場を保とうとする構造」です。たとえば、会議で自分の意見があるのに、「まぁ、みなさんがそれでいいなら……」と引いてしまうような基本姿勢です。
本当は違和感があるのに、「私が我慢すれば、丸く収まるだろう」と黙ってしまう。これがLose-Winです。無意識にこの状態で長年過ごしてしまうと、課題を解決せずに“回避”するクセが強まります。外部環境に流される人生になりがちなのです。
結果、自分から環境に影響を与えようとする力が弱まり、影響力が薄くなっていきます。存在も軽くなります。Lose-Winとは、「優しさのように見えて、実は“成長しない構造”」と言ってもいいでしょう。
特に、問題解決能力が高まりません。ビジネスの現場においては、自ら課題を発見し、解決できるような主体的な人が評価されます。場を荒立たせないだけの人より、状況を動かせる人が“信頼”も“評価”も勝ち取っていきます。だから、いい人のまま立ち止まっていると、本人の意に反して“選ばれない人”になってしまいます。
どれだけ善人でも、他者からすると「自分で考えていない人」「解決しない人」「進まない人」「深く関わろうとしない人」「頼りない人」と見えてしまいます。だから、いい人ほど「見られ方のズレ」が大きくなるのです。
さらに厄介なことに、いい人は周囲からも、その弱点についてフィードバックされにくい、という構造的な弱みを持っています。理由は明確で、フィードバックすると本人が傷つきそうだし、言っても改善されなさそうだからです。周囲の人は、そのために気が引けて本音を本人には言いづらいのです。これは、本人にとっても不幸なことです。

