「裏事情を説明すると、すべてをチョコレートにしてしまうと原価が高くなり10円では採算が合わなかったんですね。そこで、真ん中に砂糖や水飴などから作られるヌガーを詰めました。キャラメルをはじめとする砂糖菓子の製造ノウハウがあった松尾製菓だからこそ開発できたのだと思います」(チロルチョコ開発部マーケティング室主任の川崎佑真氏)
キューブ状で中にさまざまな素材が詰まっている、チロルチョコの代名詞とも言えるアイデンティティがここで形成されたわけだ。外側のチョコレートや中身を変えることでバリエーションも無限に広がる。ちなみに、これまでに600種類以上が発売されてきたそうだ。
なお、商品名はオーストリアのチロル地方に広がる雄大な自然をイメージし、2代目の松尾喜宣社長が命名したもの。おなじみのチロルハットを被った男の子のキャラクターは「チロル坊や」の愛称で親しまれている。
今のキューブ状の形になった“きっかけ”
発売当初から子どもたちの心をつかんだチロルチョコだが、70年代のオイルショックを経て原価が高騰し、20円、30円と値上げを行ったところ、客離れが起きてしまった。そこで3つに割ったサイズにし、79年に1粒10円で売り出した。設備投資が必要なため、社運を懸けた判断だったが、無事、売り上げの回復につながった。チロルチョコの歴史を語るうえでの、1つ目の転機だったと言えるだろう。
そしてもう一つの転機となったのが「きなこもち」味の発売だ。
売り上げ回復後は客を飽きさせないために味のバリエーションを広げる方向へと舵を切ったチロルチョコ。93年にはコンビニに進出を果たしたが、当時はまだ全国の誰もが知るというポジションには至っていなかった。
この流れを決定づけたのが、03年に発売されたきなこもちだ。公式ページに「きなこチョコの中にはぷにぷにしたもちグミ入り。リアルなきなこ味は絶妙」とあるとおり、その高い再現性が爆発的なブームを巻き起こした。5カ月で1700万個という販売記録を打ち立て、社内には「コンビニの棚がきなこもちで埋まった」という逸話が残っているそうだ。
「客層が老若男女に広がり、子どものお菓子から、大人も食べるお菓子へと、チロルチョコのイメージを変えた商品でした」(川崎氏)

