誰もが一度は食べたことがあり、好き嫌いも少ない。安心して選べるメニューが、ロケや会議の現場では重宝される。
メニューを絞ることには、作る側にもメリットがある。商品数が増えれば、その分だけ仕入れや調理は複雑になる。品質管理も難しくなり、コストも上がる。王道に集中することで、味を磨き続けることができるのだ。
さらに王道メニューには、もう一つ強みがある。飽きられにくいことだ。弁当業界では、のり弁やシュウマイ、焼肉など、一品に特化した専門店も人気を集めている。ただ、ロケ弁や会議弁当は、特定の企業や制作会社が繰り返し利用することが多い。そのたびに内容が変わらなければ飽きも出るが、同じブランドの中に複数の選択肢があれば話は別だ。
今日はチキン南蛮、次は鮭、その次はハンバーグ。ひとつの店で注文しながら、その都度違う弁当を選べる。それが「また頼もう」につながる。
流行を追うのではなく、定番を磨く。その積み重ねが、ロケ弁の激戦市場で支持され続ける理由になっている。
目指したのは「冷めて完成する味」
塚田農場おべんとラボのおいしさを支えているのは、「冷めてもおいしい」という発想だ。
店で食べた時は感動するほどおいしかった料理が、持ち帰って食べると、意外と普通だった…そんな経験はないだろうか。揚げ物はしんなりし、ご飯は固くなる。できたてで食べることを前提に作られた料理ほど、時間が経つことで変化しやすい。弁当は、飲食店の料理をそのまま詰めればおいしくなるというものではないのだ。
そもそも飲食店と弁当では、求められるおいしさが根本的に違う。飲食店はできたてを最高の状態で提供する商売だ。一方で弁当は、調理から食べるまでに時間がある。ロケ現場や会議室に届けられ、ふたを開ける頃には、料理はすでに冷めている。
そのため目指したのは、「冷めた状態でもおいしく食べられる弁当」だった。
「『お弁当だから仕方がない』では終わらせたくなかったんです。すべてのおかず、そしてご飯も妥協せず、研究に研究を重ねました」
象徴的なのが、看板商品のチキン南蛮だ。居酒屋「塚田農場」では揚げたての鶏肉に甘酢をからめ、そのまま提供する。しかし同じレシピを弁当に使えば、時間とともに衣はしんなりし、風味も落ちてしまう。

