居酒屋『塚田農場』で、すでにそのビジネスモデルを実践していたように、弁当でも生産者と消費者の双方にメリットのある仕組みをつくりたかった。問題は、それをどんな形で事業にするか。
弁当は外食と違い、大きな店舗や多くの接客スタッフを必要としない。その分、食材や商品の質にコストをかけられる。米山さんは、そこに可能性を見た。
「おいしいものを、ちゃんと届けたい。真っ当な食ビジネスをやれば、そこにニーズもチャンスもあるはずだ」
こうして、塚田農場おべんとラボが誕生した。
流行を追わず、王道を磨く
塚田農場おべんとラボは、最初から今のようなロケ弁として人気のブランドだったわけではない。
事業を始めた当初は、2000円を超える高価格帯の弁当が中心だった。主な顧客はMRと呼ばれる製薬会社の営業担当者。病院で開かれる医師向け説明会などで配布されることを想定していた。
しかし、事業開始から約1年後、方針を変える。より多くの人に利用してもらうため、1000円前後の商品を展開し始めたのだ。その直後、大きなチャンスが訪れる。
2016年、日本テレビ「24時間テレビ」から2000食の注文が入ったのだ。
これがきっかけとなり、塚田農場おべんとラボはロケ弁として一気に認知を広げていく。売り上げはその後、右肩上がりで伸び続けた。2022年3月期に16.4億円だったが、翌年には20.3億円、2024年3月期に24.5億円、2025年3月期に30.8億円、そして2026年3月期には35.8億円に達した。4年間でおよそ2倍以上の成長だ。
増える需要に対応するため、製造体制も強化した。当初は池袋の小規模な工場で製造していたが、その後拠点を移し、より大きな生産体制を整えた。現在では1日に1万食以上を製造するまでになっている。ただ、規模が大きくなっても変えなかったことがある。
メニューの数だ。定番商品は約20種類。季節限定商品も、流行を意識した商品もほとんど出さない。新商品も年間で数種類ほどに絞り、「王道メニューを磨くこと」に集中してきた。
理由の一つは、ロケ弁や会議弁当ならではの特徴にある。こうした弁当は、「注文する人」と「食べる人」が違う。注文する人は、自分の好みではなく、提供する人の誰もが満足しそうなものを選ぶ。個性的な味や尖ったコンセプトの商品は、話題にはなっても実際には選ばれにくい。
だからこそ強いのが王道だ。チキン南蛮、ハンバーグ、銀鮭、焼き鳥。

