実際、市場の構造にも参入余地はある。物語コーポレーションのプレスリリースによると、うどん市場はセルフサービス型(約2000億円)とフルサービス型(約5900億円)で構成されるが、セルフサービス型は上位2ブランドが売上シェアの大部分を占める一方、フルサービス型は個人店が多く、上位ブランドのシェアは1割強にとどまるという。
昨今、物価高騰により外食で1000円以内に収めることが難しくなっている。ラーメン1杯の値段が1000円を超え、「1000円の壁」が崩れつつあると言われているが、その流れはラーメン以外にも広がっている。牛丼の松屋でも、美味しそうな期間限定商品は余裕の1000円超えだし、カレーのココ壱も欲望のままにトッピングを付ければ簡単に1000円を超えてくる。
各社、企業努力を続けてはいるものの値上げは避けられない。しかし庶民の財布のひもは固いまま。そんな中で外食企業が望みを託すのがうどんだ。いわゆる「粉もの」は原価が低い。その中でもうどんはスープに趣向を凝らすパスタやラーメンよりも原価を抑えることができそうだ。
さらに、日常食として老若男女になじみがあり、ターゲットが広くとれることもポイントだ。出汁で味わうものが多いので、脂っこいものを避けたいお年寄りや女性も親しみやすい。一方、ボリュームが欲しければ天ぷらや丼ものを追加すれば若い男性も満足できる懐の広さがある。
1000円でゆっくり食べられて「体験価値」もある
先に紹介したうどん店は、いずれも売りの商品は一杯1000円前後。かけうどんのようなシンプルなものだと600円台だったりする。
そこに、無料で麺の増量ができたり、豪華な食べ放題が付いてきたり、豊富なトッピングでカスタマイズできたりする楽しさがある。ファストフードのようにカウンターに並んで急かされながら注文し、食べたらサッと出ていくような味気ない雰囲気でもない。基本的に席に座ってゆっくり注文できる。「もっちりうどん源次郎」と「武蔵野うどん 小麦晴れ」に至っては、子連れでもゆっくり食事できそうなボックス席も多くあった。外食ならではの「体験価値」の備わった店づくりで、値上がりが進む中でお客の喜ぶツボを押さえている。

