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ライフ #歌舞伎町の横顔

「大物芸能人が贔屓にした"のり弁"」「指詰め前のヤクザが最後の晩餐に…」歌舞伎町のレトロな食事処が、70年愛されるワケ

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歌舞伎町 ひょっとこ
終戦後、歌舞伎町周辺で移転をくり返しながら営業してきた食事処「ひょっとこ」(撮影:梅谷秀司)
  • 肥沼 和之 フリーライター・ジャーナリスト
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「お母さん」であり「看板娘」でもある文江さんも70代を迎えた。死ぬまで店に立つのが目標だが、あとどれくらい続けられるか考えることもあるという。いつかはやはり、円さんに店を継いでもらいたいのだろうか? 円さんもいる前で尋ねると、文江さんはこくりと頷いた。

「そうですね。娘にお料理を覚えてもらって、やってほしいっていう思いはありますよ」

それを聞いて円さんは、「どうでしょう」と答える。ひょっとこのメニューは、文江さんが長年の感覚で調理をしてきた。レシピ化されていないため、簡単に覚えることはできない。しかも円さんは現在、小さなお子さんの育児中でもあるため、なかなか料理修行に時間を割けない事情があるのだ。

現在(2026年6月時点)のランチメニュー。この物価高の中、1000円でこのボリュームはありがたい(撮影:梅谷秀司)

「どんな形でも残したい」という娘の決意

だが、ひょっとこを残すことは決意している。

「今のようなメニューや味は、ちょっと難しいかもしれません……が、ひょっとこが食事処のままなのか、お弁当屋さんになるのかわからないですが、どんな形でも残したいとは思っています。でも、母が今倒れちゃったら、ひょっとこが終わっちゃうから、もうちょっと母には頑張ってもらいたいですね」

それを聞いた文江さんは、「じゃあ、頑張らなきゃね」と微笑んだ。

母娘のツーショット。これまでも、これからも、支え合って「ひょっとこ」を守っていく(撮影:梅谷秀司)

取材は16時から始まり、文江さんや円さんは仕込みなどの開店準備をしながら、たくさんの話を聞かせてくれた。その間に、できあがった煮物などが次々とカウンターに並ぶ。ついビールを注文したくなるのを我慢する。

間もなく、開店時間の17時30分だ。今夜もひょっとこには、さまざまな人が訪れるのだろう。おなかを満たしたい人、一杯やりたい人、お母さんと話したい人、店の雰囲気に浸りたい人。

これまでも、そしてこれからも、歌舞伎町にある小さな食事処は、人々のおなかも心も満たし続けていく。

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