テトリスとはご存じの方も多いでしょうが、ブロックを回転させて落とし、横一列にそろったら崩れるというブロック崩しのゲームです。
参加者をランダムにテトリスグループと記録のみのグループに分けたところ、テトリスを3分間プレイしたグループでは、欲求の強さが平均70%から56%へと14ポイント下がりました。この効果は食べ物への欲求だけでなく、アルコール・タバコ・カフェインへの欲求にも一貫して確認されています。
この背景にある考え方が「精緻化侵入理論」。食べたいという衝動は、頭の中に「食べているときの感覚的なイメージ」が浮かぶことで強化されていきます。チョコレートの甘い香り、とろける食感、口に入れたときの満足感。そうした映像が脳内で繰り返されるほど、衝動はどんどん膨らんでいくのです。
ここでテトリスが登場します。テトリスのようなゲームは「視空間ワーキングメモリ」と呼ばれる脳の領域を使います。
これは頭の中で形や空間を操作するための作業スペースで、広さには限りがあります。ブロックを回転させたり積み上げる場所を判断したりするだけで、この作業台はあっという間にいっぱいになります。
すると、食べ物の映像を再生する余裕がなくなり、脳の作業メモリを埋めて食欲のイメージを追い出す仕組み(テトリス法)が働くのです。衝動を強化する「頭の中の映像」そのものが作られにくくなる、ということでもあります。
食べたい衝動に「負けた」のではなく、「脳の構造のうえで、映像を止めるものがなかっただけ」。対策は意志力を鍛えるのではなく、脳の作業台をテトリスなど別のもので埋めてしまえばいいのです。
「衝動買い」を誘うコンビニの設計
コンビニに「ちょっとだけ」と入ったはずが、レジに並ぶ頃には手にスナック菓子やスイーツが増えていた、という経験は誰にでもあるはず。あれは意志力の問題ではなく、「環境と習慣が自動的に引き起こす行動」の結果なのです。

