私は、人的資本経営とは「失敗を減らす経営」ではないと思っています。
むしろ、「挑戦を増やす経営」です。
人は、失敗しないように管理されるだけでは成長しません。自分で考え、動き、試し、失敗し、そこから学ぶ。そうした経験の積み重ねによって、人は育ちます。
だから「変われる会社」は、失敗を責めるよりも、「挑戦の数」を増やそうとします。
カクイチの新規事業で、象徴的な話がありました。
ナノバブルを活用した養殖事業では、最初に1000匹のチョウザメを育て、そのうち300匹が死んでしまったそうです。
普通なら「失敗」として終わる話ですが、経営陣はそれを「他社にはない貴重なデータだ」と受け止めました。
成功事例はどこでも手に入りますが、自分たちが挑戦して得た失敗だけは、自社だけの資産になります。
これは非常に重要な視点です。
挑戦しない会社には、失敗もありませんが、失敗がない会社には、独自の学びも蓄積されません。
人的資本経営とは、挑戦できる環境をつくり、その挑戦から学びを蓄積していくことなのです。
「管理職は何をする存在なのか」を問い直す
会社が変わるとき、最後に問われるのは管理職の役割です。
これまで多くの会社では、管理職の仕事は「情報を集める」「指示を出す」「進捗を確認する」「部下をコントロールする」など「管理すること」がメインでした。
しかし、情報が誰でも見られるようになり、社員同士が直接つながるようになると、「管理職の役割」は変わります。情報を持っていること自体は、以前ほど価値を持たなくなるからです。
カクイチでは、Slackの浸透とともに、社長と現場が直接つながるようになった結果、中間管理職が情報を仲介する必要が薄れ、「課長職そのものを廃止する」という決断に至っています。

