INDEX
定年退職は、ただ会社を辞めるだけの出来事ではありません。
肩書き、役割、予定、人間関係、評価される場所。現役時代には当たり前のようにあったものが、退職した瞬間に一気に失われます。そのとき、多くの人が初めて突きつけられるのが、「仕事を離れた自分は、いったい何者なのか」という問いです。
この問いに答えられる人は、定年後にむしろ生き生きし始めます。一方、仕事だけを心の支えにしてきた人は、急に老け込んだり、家庭で居場所を失ったり、原因のわからない不調に悩まされたりします。
定年後の明暗を分けるのは、貯金額や健康診断の数値だけではありません。本当の境界線は、現役時代のうちに「仕事以外の自分」を育ててきたかどうかなのです。
「仕事人間」だったエリートほど定年後に一気に老け込んでしまう罠
現役時代に優秀だった人ほど、定年後に危うくなることがあります。毎朝決まった時間に出社し、会議に出て、部下に指示を出し、取引先から頼られる。こうした生活は、本人が思っている以上に強力な「自分を保つ装置」です。「部長」「先生」「社長」と呼ばれることで、自分の価値を確認できる。毎日予定があり、自分を必要としてくれる人がいる。それが生活の張りとなり、心と体を動かしているのです。
ところが退職すると、その装置が突然外れます。昨日まで大勢の人から頼られていた人が、今日から「家にいる人」になる。自由になったはずなのに、何をしていいかわからない。朝起きる理由も、人に会う予定もなくなる。最初は「疲れが出ただけ」と思うかもしれません。

