平日は5時間睡眠で乗り切り、休日は昼過ぎまで寝ている――。日々ハードに働く30〜50代のビジネスパーソンの中には、このような睡眠習慣を持つ人も多いのではないでしょうか。
睡眠不足が心身に悪いことは誰もが知っています。しかし、「いったい何時間寝るのが最も体に良いのか」「休日の寝だめは睡眠不足解消に役立つのか」という問いに対し、明確な答えを持たない人がほとんどです。
そんななか、数万人から数十万人規模のビッグデータと最新ウェアラブルデバイスを用いた研究により、睡眠と健康に関する驚くべき事実が次々と明らかになってきました。特に、今年5月に世界的な科学誌『Nature』に発表された画期的な最新研究「Sleep Chart(睡眠チャート)」では、睡眠時間が「臓器の老化」にどのような影響を与えているのかを、明らかにしました。
「生物学的老化時計」とは
これまでの睡眠研究と今回の研究が一線を画しているのは、単なるアンケートや病気の有無だけでなく、「生物学的老化ギャップ」という最先端の指標を用いている点です。
私たちは皆、平等に年を取ります(暦年齢)が、生活習慣の違いによって、細胞や臓器の古さ(生物学的年齢)には差が生まれます。この暦年齢と生物学的年齢のズレを精密に測るのが「生物学的老化時計」です。
研究チームは、イギリスの約50万人分の超大規模な健康データ(UKバイオバンク)を活用し、脳のMRI画像データや血液中のタンパク質の状態、エネルギー代謝で作られる物質のバランスなどをもとに、分子レベルの分析を行い、23種類もの「老化時計」を作成しました。
これにより、脳や心臓、肺、肝臓、腎臓、免疫システムといった「全身のあらゆる臓器や組織、機能」が、睡眠時間によってどれくらい老化しているかを可視化することに成功したのです。

