ここで、多忙なビジネスパーソンが抱く「平日はどうしても睡眠を削ってしまうが、週末の寝だめでカバーできないのか?」という切実な疑問について、最新の科学はどう捉えているのでしょうか。
これに対する答えは、「睡眠不足になってしまったら回復睡眠をとるべきだが、日々の睡眠時間がばらつくこと自体は危険」というものです。
まず、約8万5000人のウェアラブルデバイスのデータを分析した2026年の研究によれば、睡眠不足に陥った際、その後に十分な睡眠をとる「リバウンド睡眠(回復睡眠)」を行うことで、睡眠不足による全死因死亡リスクの上昇をある程度和らげることができることが示されています。
特に普段から睡眠時間が短い人にとって、睡眠不足のあとにしっかりと回復のための睡眠をとることは、命を守るために非常に重要であると報告されています。つまり、睡眠の“借金”はしっかりと返済することには意味があるのです。
疾患リスクが高い「休日の寝だめ」
だからといって「平日に徹夜して、休日にまとめ寝をすればよい」というわけではありません。
数千人規模の長期間のウェアラブルデバイスによるモニタリング研究では、日々の睡眠時間のばらつき、すなわち睡眠の不規則性が大きい人ほど、慢性疾患のリスクが高まることが明らかになっています。
具体的には、毎日の睡眠時間が不規則な人は、肥満、高脂血症、高血圧などの生活習慣病や、うつ病、全般性不安障害などの精神疾患の発症リスクが有意に上昇することが確認されました。なかでも休日に睡眠リズムを変えることで生じる「社会的時差ボケ」は、体内の体内時計を狂わせ、炎症を引き起こしたり代謝を悪化させたりする独立したリスクファクターとなるのです。
そして、最も死亡リスクが低く健康を保てるのは、「毎日規則正しく、適正な睡眠をとっている人」です。
どうしても睡眠不足になるようであれば、週末まで放置して一気に寝だめをするのではなく、翌日や翌々日など「できるだけ早く」回復睡眠をとり、普段のリズムを極力崩さないことが現実的な防衛策となります。

