たとえ気まぐれで自国中心主義であっても、アメリカ抜きに世界秩序を維持することは不可能だとの認識で、ヨーロッパ首脳は一致している。一方で、戦後長きにわたりアメリカ依存を続けてきたヨーロッパ諸国はトランプ氏から自立的防衛戦略を迫られているが、アメリカに最も近いイギリスでさえ、トランプ氏が要求する「防衛費GDP比5%」には遠く及ばない2.2%だ。スペインなどは、世論の反発もあってトランプ氏の圧力を跳ね返している。
防衛費よりは福祉大国構築に多額の予算を戦後費やしてきたヨーロッパ諸国は、アメリカから見れば身勝手というしかない。ヨーロッパ首脳は第1期トランプ政権で表面化した劇的変化をやり過ごそうとしたが、2期目の今は、ようやくトランプ氏の主張に対する納得感も生まれつつある。今では「アメリカへの過度な依存は危険」との認識が大勢を占めつつある。
イランの核開発をめぐる協議が開始されれば、2015年当初の国連による対イラン制裁の責任国であるイギリス、フランス、ドイツらは、「イランを核武装させない」という共通認識を持っており協議への参加を望んでいる。協議を不安視するアメリカにとって長年、協議を行ってきたこれら3カ国が支えになるはずだ。アメリカ国内では「イランに譲歩しすぎ」と非難されるトランプ政権だが、これら3カ国が加われば単独交渉の重荷から解放される。
ヨーロッパが見せ始めた中国への強硬姿勢
欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、サミット後に開かれるブリュッセルでの首脳会議で、中国への対立姿勢を鮮明にする予定だ。ヨーロッパは中国が不公正な貿易慣行を行っていると批判しているが、中国も同様な批判を行っている。
ドイツと中国2国間の貿易赤字は2025年に3600億ユーロ(約66兆円)に達し、その後も増加し続け、EU最大の経済大国ドイツを苦しめている。さらにフランスは大手デパートが中国の低価格オンラインファストファッションブランド「SHEIN」との契約を打ち切ったことで問題が表面化している。
中国の過剰生産能力に対する懸念が高まる中、欧州委員会は貿易調査を開始した。その結果、新たな防衛策を提案し、EUとしては市場のゆがみに対処するよう北京への圧力を強めている。中国もこれに対し、外国の競合企業を市場から排除するための措置を講じることで対抗している。欧州委員会は中国との対話を強化しながら、必要に応じて攻撃も辞さない構えだ。
実際、ヨーロッパの産業基盤が中国の進出で危機に瀕していると指摘する声は多い。ドイツのメルツ首相はドイツ産業を守るため対抗手段を講じることも辞さない構えだが、中国からのレアアース輸出制限でハイテク産業は瀕死の状態にあり、中国をこれ以上刺激すれば壊滅的被害を受けるとの慎重論も聞かれる。

