『岸辺のアルバム』(1977年)を取り上げた前編では、夫婦関係は共通部分と対立部分の両輪をバランスよく維持していくことが大事であること、それは自然発生的でないためコミュニケーションなどの努力が必要であることを指摘した。意思疎通を疎かにした田島夫婦は破綻の道を辿ることになったのだ……。
後編では今年3月に完結したNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の夫婦を取り上げ、現代の夫婦描写を覗いてみたい。
『ばけばけ』は明治時代に活躍した小泉八雲(出生名:パトリック・ラフカディオ・ハーン)と妻・セツをモデルにしたヘブン(トミー・バストウ)とトキ(髙石あかり)の日常を面白おかしく描いた物語だ。
夫婦の日常を静かに描く『ばけばけ』
本作の大きな特徴は他愛のない日常を淡々と映し出すという点だ。
舞台となる1870年代~1900年代初頭の明治時代といえば、西洋化・文明化の一途をたどっていた時期であり、大日本帝国憲法の発布や日清・日露戦争の勃発など歴史上大きな出来事のあった期間であった。しかし、『ばけばけ』は国内外の大きな動態ではなく、夫婦の日常を細かに描くことを選んでいる。
例えば、台所の隙間に落とした箸が取れずに様々な人を巻き込んだり(結局取れなかった)、家の中から焼き網がなくなってしまい家族の誰かが盗んだのではないかと犯人捜しを始めたり(結局隙間に落ちているだけだった)、「ドラマでそこまで取り上げるか!?」という描写が続く。しかし、これが面白い。俳優たちのコミカルな演技や演出・脚本が見事に絡み合い、視聴者を魅了した。

