クラシックマツダの神辺浩司氏は会場でこう語った。「じつは、昨年のこのイベントで質問を受けた3日前に在庫切れになったと知ったばかりで、正直まだ何もできていませんでした。1年後の今日、ようやく進展をお伝えできます」。
FC後期・FD前期用メタポンの製造元だったサプライヤーへ復刻を打診したが、設備も金型も失われており断られた。図面を求めると「すべて廃棄した」との回答が返ってきた。万事休す――、という状況に追い込まれたところで頼ったのが、株式会社ミクニだ。
ミクニといえばかつて「ミクニソレックス」のキャブレターで知られる老舗。1923年創業の同社は、キャブレターが燃料噴射システムに取って代わられたあとも「流体を精密にコントロールする技術」を軸に、スロットルバルブや各種ポンプ類の分野で2輪・4輪メーカーへの供給を続けている。
ロータリーエンジン搭載車とミクニの関係性
じつはミクニとロータリーエンジンの縁は古く、67年デビューのコスモスポーツに搭載された10Aロータリーエンジンに採用されて以来、マツダロータリーのメタポンはほとんどがミクニ製だった。
FC型RX-7のマイナーチェンジで電子制御式メタポンとなり、別サプライヤーに切り替わったが、技術的な知見はミクニに蓄積されている。最初は難色を示したミクニだったが、社内でも少量多品種での補用部品供給というビジネスモデルへの課題意識があり、マツダの相談がそのテーマとぴったり合致した。
さらにこの連携を可能にした背景がもうひとつある。藤原清志氏がマツダ退任後にミクニの取締役に就任しているのだ。そう、軽井沢でロードスターへの思いを語ったその人だ。マツダとミクニの間に深い信頼関係が築かれていることは、容易に想像できる。
岩手・盛岡事業所からわざわざ足を運んだミクニの製造グループ長・渡辺健一郎氏は、集まったロータリーオーナーたちを前にこう語った。「みなさんが愛車を手放さずに乗り続けてきた理由は、そのクルマが人生そのものだからではないかと思います。部品がないかもしれないという不安を持って乗ることから、誇りを持って乗り続けられる安心へと変えていけるビジネスを目指したい。FC後期型のメタリングオイルポンプを、純正品として蘇らせます」。

