世界で最も権威のあるがん治療の医学会の1つに、アメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)があります。このASCOの会場で、世界中から集まったがん治療の専門医たちがスタンディングオベーションで、惜しみない賞賛を送った“その理由”が注目されています。
それは、“30年にわたり創薬不可能とされた膵臓がんの新薬が開発され、臨床試験で進行した膵臓がん患者の生存期間を2倍に延ばすことに成功した”というもの。医学会でこのようなスタンディングオベーションがあることはほとんどなく、それだけがん治療医はこの新薬を心待ちにしていたといえるでしょう。
早期発見が難しい理由
医学の世界において、膵臓がんは長年“難攻不落のがん”と呼ばれており、医師や科学者たちはその診断や治療の手強さに阻まれ、有効な手立てを見つけられずにいました。
厚生労働省の統計によると、現在の膵臓がんの5年生存率は11.8%です。報告にもよりますが、これは1990年代半ばの1~4%からは改善しているものの、依然としてがんの中では低いほうに入ります。
膵臓がんがなぜ難攻不落かというと、その理由の1つは膵臓は体の深部にある“沈黙の臓器”であり、初期段階ではほとんど症状が出ないからです。病院で患者さんを診ている筆者らの実感として、診断がついたときにはすでに手術が困難な状態であることが、圧倒的に多いのです。
