実は難攻不落の膵臓がんにも、たった1つ“治療の決め手”となる特徴が存在します。それが「KRAS(ケーラス)」という遺伝子の変異です。
報告によっても違いますが、膵臓がんの患者さんの約90%に見られるとされるKRAS変異は、がん細胞を増殖させる暴走スイッチとなっています。KRASに変異があるとオフスイッチが働かなくなり、細胞が際限なく増殖してしまうのです。
1982年にその存在が発見されて以来、KRAS変異の働きをオフにできれば、膵臓がんが克服できると考えられてきました。
KRAS変異の働きを止めるには、がん細胞に何らかの「くさび(薬)」を打ち込んでオフにする必要がありました。ところが、膵臓がんの表面は滑らかで、くさびが入り込む「くぼみ」が見つかりません。そのため、30年以上にわたり、創薬不可能(アンドラッガブル)とされてきたのです。
事態が劇的に動いたのは2013年。科学者たちはついに、KRASの表面に「特定の条件下でだけ現れる隠れたくぼみ」を発見。以来、「直接阻害薬」の開発ラッシュが始まりました。
急激に進む新薬の開発
今回のASCOで発表されたダラクソンラシブ(RMC-6236:汎RAS阻害薬)のほかにも、特定のRAS変異(KRASはRAS遺伝子ファミリーの仲間)を狙い撃つRMC-9805など、くぼみの形に合わせたくさびが開発され、臨床試験で驚異的な成果を出し始めています。
そしてそれらの成果――“進行した膵臓がん患者の生存期間を2倍に延ばすことに成功した”ことが、このほど発表されたのです。ダラクソンラシブは飲み薬で1日1回服用します。副作用は皮疹や口内炎、吐き気、下痢といったものが報告されています。
