湿邪対策で重要になるのが「脾(ひ)」の働きです。
漢方における脾は西洋医学でいう脾臓とは異なり、水分や栄養を全身に巡らせる働きとする臓器とされていて、主に消化・吸収、水分代謝、そして漢方の考え方でいうところの、気・血(けつ)の生成を担います。
脾がしっかり機能していれば、体内の水分は適切に処理され、不要なものは排出されます。しかし、梅雨の湿邪は脾の働きを低下させてしまいます。その結果、水分をうまくさばけなくなり、体内に余分な水が停滞してしまうのです。この状態を「水滞(すいたい)」と呼びます。
さらに、水滞の状態が続けば単なるむくみにとどまらず、代謝の低下を招き、脂肪として蓄積されやすくなります。いわゆる“水太り”という状況です。つまり、梅雨時期に「太りやすい」と感じる背景には、湿邪が脾を弱らせ、水滞という状態になっていることが考えられるのです。
脾を補うセルフケア
では、こうした梅雨時期の不調にどう対処すればよいのでしょうか。
繰り返しますが、むくみや太りやすさは「脾の機能低下」と「湿の停滞」によって引き起こされますので、その対処法はシンプルに、「脾を補うこと」と「湿を取り除くこと(余分な水分をしっかり排出すること)」の両方を行うこと、になります。
まず食の対策としては、山芋やかぼちゃ、米(特におかゆ)などを摂ることが勧められます。これらの食材は胃腸を温め、消化吸収力を高める働きがあります(脾の機能低下を防ぐ)。
同時に、余分な水分を排出する食材を摂りましょう(湿を取り除く)。代表的なものに、ハトムギや小豆、冬瓜(とうがん)などがあります。
そして、この時期に特に筆者がおすすめしたいのが「きゅうり」です。きゅうりは「水分が多いだけの食材」と思われがちですが、実は湿邪対策に非常に適した性質を持っているのです。
きゅうりは生薬名を「黄瓜(おうか)」といいますが、漢方薬の材料(生薬)として使われることはほとんどありません。その理由は水分が多く、乾燥させるのが難しいからで、昔から漢方薬の材料というよりもむしろ民間薬として古くから親しまれてきた食材です。
