ちなみに上述したボーイング787とGalaxy Note 7も、事故後、問題を究明し品質を向上させるという同様の本質アプローチを取っていた。
「実用性と安全性、両方を取る」──新セルの正体
アンカーの新技術「ネオリチウムイオンバッテリー」、革新点は3つある。
1つ目は、不純物の徹底排除だ。セルの安全性を大きく左右する電極と電解液には、製造過程でごく微細な不純物が混入し、内部ショートの引き金になることがある。
新セルは正極での磁性異物の含有を667万分の1未満にまで抑え、電解液では水やフッ化水素の含有率を[極めて高い基準]で厳しく制限することで、発火の原因そのものを根本から断つ仕組みを実現したという。
2つ目は、長く使い続けても劣化しにくい安定性。充放電を繰り返すうちに[セル内部に少しずつ形成される「デンドライト」は]…大きく抑え込み、寿命が尽きるその日までこれまで以上に安心して使い続けられる品質を確立したという。更に、電解液の配合を最適化し、酸素の発生や発熱等を含むセル内部における副反応の進行も抑制している。
そして3つ目が、過酷な物理試験への対応だ。象徴的なのが「釘刺し試験」である。満充電のセルに直接釘を突き刺し、強制的に内部ショートを起こすこの試験は通過が極めて難しいAnkerのネオリチウムイオンバッテリーは第三者試験機関にて実施された試験ではこれを100%クリアしたという。135度の熱暴走試験や耐圧試験など、第三者試験機関での試験では複数の厳しい試験もすべて通過したとする。
実は、この釘刺し試験への対応こそが、これまで安全性と利便性のトレードオフを生んできた元凶でもあった。
「これまでは釘刺し試験を通すために、(バッテリーを)2倍くらいの厚みにしないと危なかった。そうすると携帯性がなくなってしまい、意味がない。その両方を、実用性と安全性をうまく両立できたのが今回の大きな点だ」と猿渡氏は語る。
発火しにくさを追えば重く大きくなり、軽さを追えば安全性が犠牲になる──その二律背反に、セルの内部構造そのものを改善することで答えを出したわけだ。
