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発火事故と航空規制で揺れるモバイルバッテリー市場──首位アンカーが選んだ次の一手

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アンカー代表取締役CEOの猿渡歩氏
日本での累計出荷台数1億台に合わせるように、Anker Power Conference 2026でブランド再編と新しいロゴマークを発表したアンカー・ジャパン代表取締役CEOの猿渡歩氏(写真:筆者撮影)
  • 林 信行 フリージャーナリスト、コンサルタント
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進化したのはセルだけではない。筐体には高い難燃性素材を採用し、万が一発火しても火を外に広げず封じ込める。

ソフト面では独自の新しいバッテリーマネジメントシステム(BMS)を開発し、セル一つひとつを秒単位で個別に監視。異常を検知すると製品本体を一時ロックしたり、強制的に使えなくしたりする機能を実装した。

使用回数が増えれば充電電圧を自動で調整し、これらの情報は専用アプリと本体ディスプレイで確認できる。冒頭の「セルだけで安全は語れない」という言葉は、こうして製品全体で安全を組み立てる思想そのものを指している。

技術的な裏付けについて、猿渡氏はこうも明かす。「従来同様のリチウムイオン電池をベースとして、内部構成の見直しにより発熱の原因と、結果としての発火を抑制している。なお、セルは中国の電池サプライヤー大手でiPhone向けの電池も手がけるATLものを使用しています」

ベースがあくまで実績あるリチウムイオンであることには、もう1つ見過ごせない利点がある。廃棄・回収のフローを、これまでとまったく同じものに載せられるのだ。

「ナトリウム電池などの代替素材には、リチウムイオン電池と同じ回収フローに載せられないものもある。そこは同じにしたまま、できる範囲で安全性を突き詰めた」。発火対策と利便性に加え、廃棄インフラとの連続性まで担保している点が、ネオリチウムの隠れた強みといえる。

この新セルを搭載した第1弾製品が、片手に収まるコンパクトさを保った「Anker Nano Power Bank(MagGo, Plus)」だ。

今後の展開について、猿渡氏の方針は明快だった。

「今回は第1弾だが、今後は段階的に切り替えていく。弊社の現在のバッテリーももちろん安全性高く製造されているが、普及が進んで想定していない使用方法も増えている。メーカーとしてそれを防ぐ意味で、徐々に切り替えていく。来年のしかるべきタイミングでは、基本的に日本で出すものはネオリチウムを中心に切り替えていく」

既存在庫があるため一斉移行とはいかないが、日本市場では新セルを標準にしていく構えだ。

もっとも、リチウムイオンに固執しているわけではない。「ポータブル電源ではリン酸鉄リチウムがポピュラーになってきて、うちもどんどん変えている。仮にリン酸鉄系の需要が高まれば、そこに合わせていく」。

原材料についても「既存のリチウムイオン電池と変わらず、現状は問題ない」と需給の安定に触れる。素材ありきではなく、商品やニーズに合わせて安全と利便性を両立できる最も良い選択肢を採る。

事故増加の背景にある「ユーザーの使い方の変化」

なぜ、ここまで安全に向き合うのか。背景には、市場そのものの変質がある。「昔はそんなに事故がなかったんですよね」と猿渡氏は振り返る。素性のよくわからない会社の参入が少なかったこともあるが、それ以上に大きいのが、ユーザーの使い方の変化だという。

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