「ご当地グルメは意図して作れるのか」──。この素朴な問いに、10年以上かけて挑み続けている人物がいる。
名古屋・錦3丁目の小さな味噌おでん店の店主が考案した「名古屋ハヤシ」という料理は、いま大手食品卸・国分中部の手によってレトルト化され、東海地方のスーパーに並ぶ。個人店の発想がなぜ大手を動かしたのか。そこには、ご当地グルメ誕生のメカニズムを解き明かすヒントがあった。
意図的に「名古屋めし」は作れるか
「名古屋めしを定義せよ」と言われて、明確に答えられる人はどれほどいるだろうか。ひつまぶしや味噌煮込みうどんのように長い歴史を持つものがある一方で、2008年に誕生した台湾まぜそばも「名古屋めし」として受け入れられている。
長い間、名古屋で親しまれてきた料理がすべて「名古屋めし」かといえばそうではなく、その線引きは驚くほど曖昧だ。結局のところ、名古屋めしとは誰かが定義して生まれるものではなく、時間の中で人々に支持され、結果として残ったものだけがそう呼ばれているに過ぎないのではないか。ならば、意図的に「名古屋めし」を作ることは可能では……。
この問いに対し、真正面から挑んできた料理が「名古屋ハヤシ」だ。名古屋・錦3丁目にあるカウンターとテーブル席を合わせても20席ほどの味噌おでんとワインの店「カモシヤ」の店主・橋本雄生さんが考案した。
