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「街のおでん屋」が生んだ赤味噌×デミグラスの「名古屋ハヤシ」、大手食品卸を動かした「意外な決め手」

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名古屋・錦3丁目「カモシヤ」の名古屋ハヤシ(979円)(写真:筆者撮影)
  • 永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー
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「メディアに取り上げられたのは、行政や商工会議所、商店街組合などではなく、個人店の店主たちの取り組みだったからだと思うと、このまま終わってしまうのがもったいないと思いましたね。そこで、名古屋の街を盛り上げることを目的に『名古屋ハヤシ倶楽部』として2015年に再出発させました。ハヤシのレシピは共通ルールを設けつつ、各店の個性に任せました。違いがあるほうが面白く、それが広がりにもつながると思ったからです」(橋本さん)

この共通ルールとして掲げたのが、「名古屋ハヤシ5か条」だ。赤味噌を使うこと、卵を用いること、東海3県の食材を取り入れること、後がけ調味料で味の変化を楽しめること、そして、東海3県の食文化を広める情熱を持つこと。この5つを軸に、各店がそれぞれの個性を生かした一品を作ることができる。

名古屋ハヤシ倶楽部は3店舗から始まり、最大で16店舗にまで拡大。現在も店舗数は増減を繰り返しながら展開が続いている。単一店舗のヒットにとどまらず、複数店舗で同時に提供されることで、ご当地グルメとしての実在感が生まれていっている。

また、店ごとに少しずつ違う味が存在することも、ご当地グルメとしての広がりを感じさせる要因になっている。

大手食品卸が「味」以上に評価した「構造」とは

名古屋ハヤシはその後、レトルト化もされた。倶楽部発足後まもなく、橋本さんが地元の食品メーカーに依頼して製造したのだ。参加店舗向けの業販用だったため、パッケージのない商品だったが、2026年2月に「名古屋ハヤシを新たな名古屋めしにしたい」という橋本さんの思いに共感した国分中部が味をリニューアルして商品化した。

国分中部のマーケティング部商品開発課の坂口裕昭さんは、当時をこう語る。

「名古屋ハヤシは、5か条のルールや誕生した背景も含めて非常にユニークだと思いました。赤味噌とデミグラスの組み合わせによる味の可能性に加え、複数店舗で展開されている点も含め、商品として広げていくポテンシャルを感じました」

「カモシヤ」の店主、橋本雄生さん(左)と、国分中部の坂口裕昭さん(右)(写真:筆者撮影)

国分中部が評価したのは味だけでなく、その構造もだった。

ハヤシライスという誰もが知る料理にローカル要素を掛け合わせることで、どの店でも成立する一皿に。でありながら、独自性も備えている点に加え、複数店舗で展開されてきた背景が商品としての説得力を高めていたのだ。

特定の1店舗の名物ではなく、複数の店舗で継続的に提供されていたことで、店の看板商品ではなく、ご当地メニューとして成立していた点も大きかった。仮に1店舗だけの名物だった場合、ここまで広域展開を前提とした商品化にはつながりにくかった可能性がある。

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