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なぜ「ひつまぶし」は全国区に?ノドグロずし、ギョロッケ…魚料理に刻まれた土地の記憶を生活史研究家がたどる

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ひつまぶし(写真:BASICO / PIXTA)
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改めて振り返れば、2000年代初頭は万博以前も名古屋だけ景気がよく、しばしば独自の文化や流行がメディアで紹介されていた。熱々のあんかけスパゲティも味噌ダレも、小倉トーストやマイあんこを持ち歩く人たちについても、私はあの頃に知った。

その中で、ひつまぶしはもしかすると名古屋飯最大のヒットなのかもしれない。名古屋の名店→名古屋全体→全国、と広がり、「日本の郷土料理」になっていったのだと考えれば感慨深い。

城崎温泉のノドグロずし(兵庫県)

兵庫県の日本海側にある城崎温泉は、開湯から1400年近い歴史を持ち、志賀直哉の短編小説『城の崎にて』で、全国に知られる。

県南部で育った私は子どもの頃、冬に蟹を食べに一度、夏に近くの竹野浜で海水浴をしに一度、家族旅行で連れて行ってもらった。大学生になり入ったインターカレッジのテニス&スキーサークルの夏合宿で行ったこともある。

いずれのときも、帰りは40分ほど南下した城下町の出石(いずし)へ「皿そば」を食べに寄った。交通手段は毎回車。このパターンは関西地方の定番らしく、田辺聖子の小説『お気に入りの孤独』(集英社)にも登場する。

近年は、文学や演劇などによる町おこしに力を入れて脚光を浴びている。海外では「日本一の温泉」という噂が流れているらしく、日本人もインバウンド客も大勢押し寄せる。京都から特急電車で2時間半で行けるので、京都と抱き合わせにする観光客もいそうだ。

名物は共同浴場「外湯」巡り。2025(令和7)年に行った折は1カ所が閉鎖中だったが、全部で7カ所ある外湯を1カ所につき800円、1日入浴券を買えば1500円で楽しめる。町の人に聞いた話だと、全湯を巡ろうと無理をして湯当たりで倒れる観光客がときどきいるようだ。

城崎温泉が、「外湯巡りができる温泉街」であることを強く打ち出し始めたのは、1925(大正14)年に北但大震災で町が全焼してからだ。真っ先に共同湯を再興させ、大通りを広げて「駅は玄関、道路は廊下で宿は客室」と位置づけ、町全体を1つの宿に見立てて温泉を楽しませる空間に育ててきた。

ただ、2025年に再訪した折、近年の旅スタイルの変化には追いついていない側面があり、新しくできた施設には素人商売っぽさが目立つところもあることに気づいた。元旅館を再生させた風呂なし・食事なしの女性専用ゲストハウスに泊まったことで、食事の問題も発見した。

夕食については、素泊まり客の増加に飲食店の集積が追いつかず「外食難民」が増えていると事前に知り、予約した店で、てんぷらや刺身、焼き魚などを堪能できた。一緒に行った食いしん坊の友人たちと、「何でもおいしい」と大喜びしたぐらいだ。

困ったのは、朝食を摂れる店の開店時間が遅かったこと。また、弁当を売っている店も見当たらない。事前に調べた2店のうち1店は弁当のサービスを止め、もう1店は開店時間が11時台で私たちが乗る10時台の電車には間に合わない。

仕方がないのでスーパーでおにぎりを買っていたら、別の店に行った友人から鮮魚店ですしをつくってくれると連絡が入り、急いで向かう。用意されたのは、ノドグロのあぶりずし3個。買ったおにぎり、おかずと合わせれば1食分になりそうだ。ところが駅前まで行くと、弁当店はあり、駅構内にも弁当売場があって笑い合った。

ノドグロずし *写真はイメージです(写真:KAZU / PIXTA)

ノドグロと言えば北陸地方のイメージが強い。しかし漁獲量を調べてみると、生息する水域の中心は日本海側で、近年は1位の山口県と2位の島根県が圧倒的に多く全体の4分の3ほどを占め、残りの4分の1を3位以下の兵庫県や鳥取県、石川県などが占めている。そして実は、中国地方のほうが北陸より上位だった。

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