では、社員が「おかしい」と感じたとき、その声を拾うための仕組みは機能しているでしょうか。
不正やハラスメントを早期に把握するため、多くの企業が内部通報制度を整えています。
もちろん、非常に重要な仕組みではありますが、「制度をつくったから、これで大丈夫」と考えるのは危険です。
消費者庁の「内部通報制度の実態調査2024」によれば、内部通報制度を設置している企業は89%に達する一方、実際に通報があった企業は23%でした。
もちろん、通報がなかった企業で不正が起きていたという意味ではありません。
ただ、この数字からわかるのは、制度を設けただけで必ず社員の声が上がってくるわけではない、ということです。
つまり、「通報がない=問題がない」と単純に考えることはできません。
内部通報制度があっても使われない
たとえば、経理担当者が月末の数字を確認しているとき、契約書の日付と売上の計上時期が合っていないことに気づいたとします。
「これ、おかしくないですか?」と最初は先輩に尋ねます。
すると、「月末はよくあるよ」「数日くらいなら調整の範囲だから」と返ってくる。
翌月にも同じことが起きる。今度は別の部署でも似た処理が行われ、金額も少し大きくなっている。
それでも誰も問題にしません。
すると、「今回だけは特別に」「目標達成のためには仕方ない」「みんなやっているから」と、小さな妥協がいつの間にか当たり前になっていきます。
本人だけの問題ではありません。
周囲もその光景を見ています。それでも誰も声を上げなければ、「ここでは言わないほうがいいのだ」という空気が生まれます。
内部通報制度があったとしても、「通報したらどうなるのだろう」「面倒な人間だと思われないか」「結局、何も変わらないのではないか」と社員が感じていれば、制度は使われません。
つまり、リスク管理で重要なのは、「問題が起きたら通報してもらう」という仕組みだけではないのです。声を上げた人を守ることは当然として、さらに一歩踏み込んで考える必要があります。
それは、本人が「これは不正です」と声を上げるより前に、組織が異変を察知できないかということです。


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