問題が大きくなる前には、何らかの兆候が出ていることがあります。
本人はまだ声を上げていなくても、周囲の人は変化に気づいているかもしれません。
「最近、あの人の様子が少しおかしい」
「あの部署だけ、妙にピリピリしている」
「あの処理について、何人かが気にしている」
こうした情報は、正式な「通報」になる前の段階では、組織の中に埋もれがちです。
しかし、リスク管理という観点では、むしろこの段階の情報こそ重要です。
「本人の声」だけを待ってはいけない
そこでひとつ重要になるのが、「周囲の目」です。
本人に「何か問題がありますか」と聞くだけではなく、周囲の社員が感じている「小さな気づき」を拾う。たとえば、本人が声を上げる前に、周囲の変化や違和感を4つの設問などを通じて捉えていく方法です。
さらに、不正やハラスメントの兆候を、実際に大きな問題が起きる前につかむ「コンプライアンスVoE」という考え方もあります。VoEとは「Voice of Employee」、つまり「社員の声」です。
大切なのは、年に一度サーベイを実施して終わりにすることではありません。
・必要に応じて確認する
・問題があれば手を打つ
・そして、「会社としてこう対応しました」と現場に返す
この循環を回していくことが重要です。
私は、現場の声を経営に届け、届いた声をもとに組織が動き、その結果を再び現場へ返していく一連の循環を、「フィードバック経営」の重要な柱だと考えています。
コンプライアンスも同じです。
規程を整備する。研修をする。内部通報窓口を設ける。それだけでは、リスク管理として十分とは言えません。
問われるのは、「おかしい」という小さな声が消えずに組織の中を流れていくか。そして、その声がまだ小さいうちに、経営が反応できるかです。「声を上げても無駄だ」「報告したら自分が不利になる」。そうした空気が組織を覆うと、兆候は表に出ないまま、静かに根を広げていきます。手遅れになってから動き出すのでは間に合いません。
不祥事に強い組織とは、「問題が一切起きない組織」ではありません。「異変を早く察知し、大きな不祥事になる前に軌道修正できる組織」です。
火が燃え広がってから消火するのではなく、火種のうちに気づいて手を打てるか。
「沈黙の組織」から抜け出すことは、働きやすい職場をつくるためだけではありません。企業を重大な不祥事から守る、リスク管理そのものでもあるのです。



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