TGV-Mの運行を目指すフランス国鉄の運行部門「SNCFボヤジャーズ」は、鉄道インフラを管理するRFIに対して13往復26本分の運行枠を要求したが、RFIは当初、わずか6枠(3往復分)しか割り当てなかった。これに対し、SNCFボヤジャーズは2024年、イタリア競争庁へ「支配的地位の乱用」という理由で訴訟を起こし、競争庁はこの訴えを認めた。SNCFボヤジャーズは、最終的に18枠を獲得できた。
実は「トンネル干渉問題」が持ち上がったのは、この訴訟の後だ。つまり、単に技術的な問題ではなく、フランス国鉄がイタリア国内線に参入するのを少しでも遅らせようという意図があったのではないか、というのだ。

実際の運行は先行き不透明
イタリア国内の鉄道網は急激な利用客数の増加ですでに飽和状態となっており、運行枠の確保は年々難しくなってきている。フレッチャロッサを運行する旧国鉄系のトレニタリアも、イタロを運行する純民間のNTVも、さらに1社が参入してくるのは好ましいことではない。そんな時に、トレニタリアを擁するイタリア鉄道(FS)の子会社でもあるRFIが「トンネル問題」というカードを切ってきた、というわけだ。
運輸規制庁は、RFIの主張を「鉄道市場の競争を制限するもの」と退けたが、RFIがピエモンテ地域行政裁判所へ控訴した結果、運輸規制庁の決定は動機が十分ではないとしてRFI側の主張を認める判決を下した。
法廷闘争はさておき、現実的には在来線にいくつも存在するトンネルなどをすべて改修することは不可能で、運行するためには車両が限界内に収まるよう設計を変えるしか方法はない。一方で、トンネルなどの規格はある程度の余裕を見て設定されているのも事実だ。
このまま平行線を辿った場合、RFI側が折れてTGV-Mを「特認」するという形に落ち着くのではないか、という話も聞こえてくる。実際、屋根のカーブなどが異なるが、全高4mを超える車両は日立レール製「ロック」など、トレニタリアも運行しており、事前に検証をして問題がなければ特認する可能性が高い。だが、現時点では先行きは見通せない状態だ。
