ヨーロッパ各国の高速鉄道網の多くは、2002年に定められたTSI(相互運用性に関する技術仕様)に準拠して設計されており、イタリア国内に建設された高速新線もこの基準を満たしている。TGV-Mもこの基準に基づいた設計なので、イタリア国内の「高速新線を」走行することには何の支障もなかった。
ところが、高速新線と並行する在来線区間に問題があった。イタリア国内の路線網の中でも、とりわけ古いミラノ―ローマ間の在来線区間の多くは19世紀に建設された区間が多く、TSIの規格より少し狭い。TGV-Mの車体は高さ4.32mで、現在イタリア国内で運行されている高速列車「フレッチャロッサ」や「イタロ」(どちらも4m)より32cm高い。
つまり、この区間をTGV-Mが走行したとき、トンネルなどの構造物に車体が接触する可能性をRFIは指摘したのだ。
本当の狙いは「参入を遅らせること」か
ヨーロッパでは、高速列車でも在来線を走行することがある。事故や災害などで線路が閉鎖されたとき、その区間だけ在来線へ迂回という措置を取ることがあるためだ。もし、TGV-Mがイタリア国内の高速新線で運行中にトラブルが発生した場合、トンネルに接触する恐れがあれば、在来線へ迂回できず立ち往生することになる。最悪の場合、ほかの列車の運行にも支障が及ぶ可能性がある。
ただ、この話は「書類上の不備」や「設計ミス」という単純なものではない。背景には、フランス国鉄のイタリア国内線参入を好ましく思わない側の「意図」が見え隠れしているのだ。
