
話は、今話題の公立高校受験における「デジタル併願制」に及んだ(中室氏<左>の写真は本人提供、窪田氏の写真は撮影:梅谷 秀司)
『「学力」の経済学』『科学的根拠(エビデンス)で子育て』の著者であり、教育経済学の視点からデータやエビデンスに基づいた子育てを提唱する中室牧子氏。
『近視は病気です』の著者で、世界的に問題になっている子供の近視対策の啓蒙活動を行う眼科医の窪田良氏。
教育と医療で分野の違いはあれど、実は2人の主張にはいくつもの共通点がある。対談企画の第3回は、2025年4月から全国的にスタートしたばかりの高校授業料の無償化や、中室氏が提案する公立高校の単願制に変わる新たなマッチングシステムについて、話し合う。
高校授業料の無償化は教育格差是正につながるのか
窪田:今年の4月から高校授業料の無償化がスタートしました。公立校では今年度から、私立校では来年度から実質無償化されますが、この制度について中室先生はどう思われますか?
中室:教育費負担は大きいため、高校授業料の無償化を求める声が大きいことは理解できます。私も子育て世代の負担を軽減していくことには総論としては賛成です。しかし、高校授業料の無償化は、細部に至る制度設計こそがその成否を決めると言っても過言ではないと思います。
私がそのように考えるのは、諸外国で導入された「教育バウチャー」に関する研究成果が既に発表されていることにあります。教育バウチャーとは、学費や教育に使途を限定したクーポンのことで、これによって子供の進路選択が親の経済力の影響を受けないようにするために行われます。これはノーベル賞を受賞した経済学者であるのミルトン・フリードマンが提唱し、多くの国で既に実施されている政策です。
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