窪田:最近では、公立高校の受験で1校しか受験できない“単願制”を廃止しようとする動きも出てきています。中室先生は、そうした政府の取り組みにも関わっていらっしゃいます。
中室:現在、ほとんどの都道府県で、公立校は1校しか出願できない「単願制」が採用されています。それに対し、私立校は複数出願できる。この状態で高校授業料の無償化が進むと、公立校を不利にさせかねない状況を招くことになります。そうならないように、公立校と私立校の競争条件をイコールフィッティングにする必要があります。
窪田:1つの高校しか出願できないとなると、経済的な理由などで公立校を志望する生徒は、本当に自分が行きたい高校よりも、「絶対に合格できる」高校を選ぶしかなくなりますよね。
中室:おっしゃる通りです。単願制のもう一つの問題は、志望校出願において積極的なチャレンジができないことにあります。今の中学生は「自分がどこの高校に受かりそうか」を判断することに、かなりの時間を割いています。
本当だったら、もっと学力を伸ばすために使うべき時間を、どこの高校だったら合格しそうかという分析に時間を取られてしまっている。来年度からの私立校の授業料無償化が導入されれば、さらに選択肢が増えるので、今まで以上に読み合いが複雑になると思います。
窪田:学力を伸ばすこと以外のことに時間を取られてしまうのは、もったいないですよね。
中室:そう思います。だからこそ、公立校の単願制を変える必要があります。現在、単願制に変わる方法として政府に提案しているのが、「受け入れ保留アルゴリズム」(DA)方式、通称「デジタル併願制」です。
デジタル併願制で難関校への挑戦に尻込みしなくなる
窪田:デジタル併願制とは、具体的にはどんな方法ですか?
中室:まず生徒は第1志望から自分が行きたい順に、複数の公立校をリストアップして提出します。その上で都道府県ごとに実施される共通試験などを受験し、その結果が合格基準を超えた学校の中から、最も志望順位が高い学校を割り当てるものです。試験の結果だけでなく、内申点や面接の結果も含まれます。この方式だと志望校の合格最低点に達しているのに、その高校に入れないということは起きません。