コミックシーモア「売上高800億円超え」の衝撃度 経営指標を初公表、なぜ高シェアで生き残れた?

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コンテンツ施策も抜かりない。2011年にオリジナル漫画の展開を始め、社内編集部から『家政夫のナギサさん』や『デブとラブと過ちと!』など、映像化に至ったヒット作を相次ぎ生み出し、差別化を図っている。

オリジナル作品と並んで重視するのが、2020年頃から開始した漫画出版社との協業作品だ。現在では20社程度と取り組みを進めているという。

例えば、KADOKAWAと協業して独占先行配信したヒット作『拝啓見知らぬ旦那様、離婚していただきます』。同作品では、コミックシーモア側のプロモーションにおけるノウハウを共有し、より広告映えするキャラクターの表情などを提案した。

KADOKAWAデジタル事業局の芦尚文局長は、「広告宣伝という点では、出版社では追いきれない部分がある。ユーザーに近いコミックシーモアからのアドバイスは貴重だ」と評価する。

マッチング技術の精緻化がカギ

勢いに乗るNTTソルマーレは、アメリカ最大級の電子漫画配信サイト「MangaPlaza」を2022年にスタート。直近の四半期売上高は前年同期比で3倍超に成長している(実数は非公表)。「このペース(での成長)を続けたい。海外においても、業界最大級を目指しながら、漫画および漫画文化の普及拡大に大きな役割を果たしていきたい」(朝日社長)。

NTTソルマーレの朝日利影社長
9月の事業戦略発表会で、今後の拡大戦略を語ったNTTソルマーレの朝日利彰社長(写真:NTTソルマーレ)

持続的な成長のカギを握るのが、作品と読者とのマッチング精度の向上だ。コミックシーモアで配信する約140万冊のラインナップのうち、40万冊はここ2年で増加したものだという。

海外展開によって読者層も世界に広がっていけば、現在の属性分析などによる対応は難しくなる。朝日社長は「飽くなき追求で、より精緻なパーソナライズを実現していく」と意気込む。

コンテンツ面で意識するのはジャンルの開拓だ。足元では、近年の大トレンドである「異世界転生」の中でも「和風異世界」ジャンルを深耕するなどして、さらなる漫画ファンの拡大や1ユーザー当たりの売上高向上を図る。

NTTソルマーレは、電子書籍事業の次なるターゲットを「早期の売上高1000億円到達」に定める。破竹の勢いを保つには、マーケティング・コンテンツ両面での不断の進化が欠かせない。

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケティング、アニメ・出版業界を担当。過去の担当特集は「サイバーエージェント ポスト藤田時代の茨道」「マイクロソフト AI革命の深層」「CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地」「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」など。

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