「唯一無二の量産型」という矛盾を内包する若者 リスクを負わず自分を差別化したい若者の生存戦略

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それではなぜ、今の若者はそんなわかりにくい行動を取るのか。その内面にはどんな心理が隠されているのか。それを端的に表すと次のようになる。

「いい子症候群の若者たち」の心理特性
・目立ちたくない、100人のうちの1人でいたい
・変なことを言って浮いたらどうしようといつも考える
・人前でほめられることが「圧」
・横並びでいたい、差をつけないでほしい
・自分で決めたくない(皆で決めたい)
・自分に対する人の気持ちや感情が怖い
・自分の能力に自信がない

例えば、大学の講義で「何か質問はありますか?」と問いかけても、今の大学生からまず返答はない。自分だけが反応すると目立ってしまうからだ。

もしあなたが講義中に、一人の学生をほめようものなら、後で「皆の前でほめないで下さい」と言われることすらある。彼らは基本的に自己肯定感が低く、自分に自信がないため、人前でほめられることには「圧」を感じる。

集団の中でほめられると、自分に対する他者からの評価が上がり、期待されたり何かを任されたりするのではないかと思ってしまう。自己肯定感が低い若者にとって、これは恐怖でしかない。

「いい子症候群化」は社会現象

この「人前でほめられる」という行為に対する若者の評価を、僕の友人でもある長田麻衣さんたちが実際にアンケートで集計してくれた。

結果は下の図表8-1の通り。サンプル集団は、首都圏在住の18歳から26歳の社会人男女411人で、約6割の若者が「大勢の前では褒められたくない」と回答している。

『静かに退職する若者たち』より引用

首都圏限定というところにサンプルバイアスが生じているが、逆に言えば、直感的にいい子症候群気質が低そうな首都圏の若者でさえ、人前でほめられたいと思う若者は4割弱しかいないということがわかる。

このような現在の若者たちの特徴を前に、一部の人は「これは非常に大きな問題ですね」、「どのように解決すべきでしょうか」と僕に言う。拙著の出版以来、取材を受ける際のインタビュアーも、ほぼ必ずこの質問をする。

しかし、僕自身は、若者たちの「いい子症候群化」を問題だと考えたことはないし、そのように伝わってしまわないよう注意を払いながら話している。

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