コロナ感染急増の原因「JN.1」はどんなウイルスか 症状、重症化、後遺症についても医師が解説

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これについては、いまだコンセンサスはないが、あまり心配する必要はなさそうだ。それは、JN.1の感染拡大が先行したアメリカなどで入院患者が増加していないからだ。

下の図はオックスフォード大学が提供するデータベース”Our World in Data”を用いて、筆者がアメリカの人口100万人あたりの新型コロナ感染による入院患者数の推移を調べたものだ。今冬のピークは1月3日の110.5人で、昨冬(1月2日140.5人)の79%だ。

人口100万人当たりのCOVID-19の週間新規入院患者数(図:筆者作成)

これは私の感覚とも合う。

今年に入ってから、新型コロナ感染がさらに軽症になっているように感じるからだ。以前は38度台の高熱が出る患者が多かったが、最近は抗原検査で陽性となった人の半分程度が37度台だ。

倦怠感は訴えるが、咳や痰などの呼吸器症状、のどの痛みなどは軽い。カロナールなどの解熱薬と鎮咳薬(咳止め)などを処方し、「ご自宅で養生してください」と伝える。

そうすると数日で状態は改善するが、それでも周囲に新型コロナウイルスをばらまくので、発症から5日間くらいは周囲にうつさないように注意したほうがいい。

重症化以外で問題になっていること

では、JN.1に問題はないのかというと、そんなことはない。十分なデータはないが、後遺症が出る人はいるようだ。先日も「数日前から少しだるく、においがわからなくなった」という20代の患者を診察した。体温は36.7度だったが、抗原検査では強陽性だった。

実は、この後遺症対策こそ、現在の世界の新型コロナ研究の中心的なテーマとなっている。

コロナ後遺症には疲労感や呼吸困難、記憶力・集中力低下(ブレインフォグ)、味覚・嗅覚障害、睡眠障害、うつなど多彩な症状が表れる。今年1月には、韓国の研究チームが、コロナ感染者は円形脱毛症の発症リスクが1.8倍に上がると『アメリカ医師会誌皮膚科版』に発表した。

昨年9月、アメリカ疾病対策センター(CDC)が発表した調査によれば、2022年にアメリカの成人の6.9%が新型コロナに罹患歴があり、3.4%が後遺症を抱えていた。

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