マウンティングには敗北しかない確率論的理由 虚勢によって尊敬を得ることは不可能に近い

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エピソードトーク内高級タワマン在住主張型の人に限らず、仕事や学歴などをめぐる虚勢合戦に血道を上げる人にも同様の悲劇が待っている。

たとえば年収を誇りたい人は、商社、外資系コンサル、外資系金融と、仮に理想のキャリアを爆走できても、その過程で桁違いの資産家と縁が出来てしまう。そうした資産家たちに負けまいとベンチャーを創業するか、創業したての会社の役員に就任して株式市場に上場して莫大な創業者利益のおこぼれを狙いだす。

そうすると先に上場を果たした先輩経営者に劣等感を抱いたり、無事に株式公開(IPO)できたとしても今度は時価総額が気になり始めたりする。こうして、劣等感を振り払うために、好きでもない高級ワインのラッパ飲みと洒落こむ。

ビジネスで大成功したとしても……

もちろん、こうした競争に邁進した挙句に、まれに周囲の誰よりも高い時価総額を達成する人もいる。しかし、そうした人は典型的には古都で教養文化に触れ「歴史に守られた由緒正しき富豪」に敗北することになる。

時価総額自慢型の人は茶室での奇々怪々な作法の数々に右往左往する。そうして由緒正しき富豪から「なんや、新しい、斬新なお作法でんな。そんなふうにお茶は自由に楽しんでもろうたら、それでええんです」などとこの上ない軽蔑/侮蔑の言葉をぶつけられるのだ。

日本の古都に限らず世界中にこうした「ぽっと出の虚勢を潰す文化」が存在する。作法や教養とは要するに「何の役にも立たないことを学ぶのに膨大な時間をかけられるくらい、何世代も余裕のある生活をしてきた」というアピールだ。だから下らなくて意味不明な作法と無駄な知識ほど虚勢潰しの強力な武器になる。

このように虚勢によって尊敬を得るという目的を達することは不可能に近い。

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