中国ではEV(電気自動車)を含む新エネルギー車(NEV)への急速な転換が進んでいる。2022年の中国の自動車販売は前年比2.1%増の2686.4万台だったが、このうちNEVは前年比93.4%増加となる688.7万台、全体の25.6%を占めた。2023年1〜6月のNEVの販売台数は374.7万台で、販売台数全体の28.3%まで成長した。
NEVのシェア拡大が続くということはつまり、日本勢が強みを持つハイブリッド車を含むエンジン車の市場が縮小していることを意味する。パイの縮小が値下げ合戦を引き起こし、中国市場では販売面だけでなく、収益面でも厳しい状況が続く。
そうした中で、マツダも決して手をこまねいているわけではない。毛籠(もろ)勝弘社長はこれまで、中国事業の今期を「反転を始める年だ」と強調してきた。一昨年から反転攻勢に向けた体制を整えてきた。
2021年には、中国の現地合弁2社である長安汽車との「長安マツダ」と中国一汽との「一汽マツダ」を事実上統合すると発表した。現地ニーズに即応できる体制を作るとともに、販売網の再編も進めてきた。
7月には中国一汽系への生産委託契約の終了で合意した。広報担当者は「中国市場の動向や中国市場におけるマツダ車のラインナップなどを勘案し、生産終了を判断した」と理由を明かす。中国でのマツダ車の生産を長安マツダに集中させ、生産効率の向上を狙う。
また、これまで北米専用だったSUV「CX-50」の中国生産を開始し、5月末にガソリンモデルを投入した。「オフロードでの使用など、エンジン車らしい特長」で、中国の消費者を惹きつけることを期待している。CX-50効果もあってか、5月、6月と中国での販売台数が今年に入って初めて7000台を突破。11月にはCX-50のハイブリッドモデルも投入する予定だ。
NEVを投入する2025年頃まで我慢は続く
中期的には、2025年頃にBEVとプラグインハイブリッド(PHEV)を設定した2車種を中国で発売する計画。現地の合弁相手である長安汽車と共同で開発しており、「”緊急モード”で活動を進めている」(ガイトンCFO)という。
とはいえ、2車種の導入は当分先。少なくとも1年半ほどは厳しい局面が続くことになる。毛籠社長は7月中旬に、「内燃機関車の価格下落はある程度続くという想定を置かざるを得ない。したがって、足元の採算は非常に厳しいものになるだろう」「これからの約1年半で、販売店を含めてどう反転に向かって準備を進めていくのかが当面の課題になる」と語っていた。
東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは、「中国では、今まで日本車やドイツ車を購入していた顧客層が国産NEVに食われてしまっている。対策ができないメーカーから負けていくだろう」と分析する。
新車種投入まで我慢が続くマツダ。大手メーカーでさえ販売台数を落とす中で、中堅メーカーが反転攻勢を仕掛けられるか。さらなる縮小が続けば、三菱自動車のように撤退も検討せざるを得なくなる。
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