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「NEC×トレジャーデータ」戦略協業で加速するDX データドリブン経営の懸念を根本解決する方法

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小澤氏と繁沢氏
NECは2022年12月に、トレジャーデータとの戦略協業を発表した。顧客データ基盤(カスタマーデータプラットフォーム、以下CDP)で国内有数のシェアを有するトレジャーデータとの戦略協業により、全体像を把握しきれないほど複雑に入り組んだシステムでも、最適なデータ活用が可能になるという。その理由と、戦略協業に至った背景について、両社のキーパーソンに取材した。

「データ収集がうまくいかない」現状への危機感

NECとトレジャーデータの戦略協業は、トレジャーデータが、NECの森田隆之氏(代表取締役 執行役員社長 兼 CEO)へ直接送った1通の手紙から動き出した。

「背景にあったのは、日本の国際競争力を上げるためにDXをより推進しなければいけないという危機感です。DXはビジネス部門とIT部門の両輪で進めていく必要がありますので、両方に大きなプレゼンスがあり、かつDX支援を積極的に実施しているNECと一緒に取り組みたいと思ったのがきっかけです」と、トレジャーデータCOO(最高執行責任者)の小澤正治氏は話す。

この思いにNECが呼応したのは、日本のDXの現状に対し、同様の意識を持っていたからにほかならない。DX支援でNEC全社をリードするテクノロジーサービス部門長の繁沢優香氏は、多くの企業がデジタル化やデータ活用に課題を抱えていると明かす。

「経営者の方々はデータドリブンの重要性を理解されていますが『戦略構築に役立つデータが欲しい』と言われたIT部門側は、具体的に何をすればいいのかわからないという悩みを抱えています。また、データ収集に取り組もうにも、実際にはなかなか進まないというご相談も多く寄せられています」

データ活用以前に、データが集められない。この問題については、小澤氏も次のように危機意識を吐露する。

トレジャーデータ小澤氏
小澤 正治 氏
トレジャーデータ 最高執行責任者
伊藤忠商事、アドビ、セールスフォース・ドットコム(現セールスフォース・ジャパン)を経てオラクルでマーケティングクラウド部門の立ち上げに携わる。2020年にグーグル・クラウド・ジャパン執行役員兼ルッカー事業本部長となり、日本におけるデータ分析基盤のあり方に一石を投じる。2021年12月より現職

「経済産業省が『DXレポート』で警告した『2025年の崖』は深刻な問題です。実際、スクラッチで構築したさまざまなシステムやソフトウェアが複雑に入り組み『全体像を誰も把握できていない状態で、どうしようもない』というケースは多くあります。とりわけ、デジタル化やデータ活用について課題のある製造業や自治体への支援を急ぐべきだと考えています」

シェアの高さと対応スピードが戦略協業の決め手

間近に迫る「2025年の崖」問題。しかし、基幹システムをオンプレミスからクラウドに変えるだけでは、投資対効果は期待できない。今後、IT人材の確保が困難になっていくことも踏まえると、データを有効に活用する必要性はこれまで以上に高まることが予想される。

「とはいえ、データを集めるシステムを整えただけでは『生きたデータ』にはなりません。とくに近年、顧客との接点は多様化しています。さまざまな応対履歴やアクセスログといったデータを統合し、それらを基にAIや機械学習も活用してより見込みの高い顧客へアプローチしていく必要があります」(繁沢氏)

だからこそ、NECではさまざまな顧客データを柔軟かつセキュアに収集・統合・分析し、顧客の解像度を上げる基盤としてCDPに早くから着目してきた。その中で、トレジャーデータとの戦略協業に踏み切った決め手について、繁沢氏は次のように話す。

NEC繁沢氏
繁沢 優香 氏
NEC テクノロジーサービス部門長 マネージングディレクター
外資系IT企業に30年以上勤務し、IT関連のオファリング企画開発責任、品質管理責任、M&A後の日本法人社長、グローバル企業のシステムアウトソーシング責任者などを歴任。2020年7月にNEC入社。AI、サイバーセキュリティ、生体認証などの事業を横断して顧客企業のDX支援をリードしている

「40%以上の市場シェア(※1)を占め、自動車業界や金融業界など各業界のトップ企業も導入し、グローバルで450社以上の導入実績がある点は、NECのお客様にとっても安心材料です。お客様の売り上げ向上や、業務効率化といった攻めのデータ活用ができることが、強力な武器となると考えて協業を決めました」

「Treasure Data CDP」は、多様なシステムと連携して顧客データを統合できるよう150以上の連携コネクタを用意しているほか、多種多様なデータベース構造へ柔軟に対応するデータ収集機能を搭載。CDPというと、データウェアハウスに添う形が一般的だが、トレジャーデータは複数システムを包含することも、特定のシステムやデータベースとひも付けることも可能だ。

「NECには多数のSEのほか、データアナリストも200名以上が在籍してすでにプロジェクトの実績も多数あり、お客様からも高い評価をいただいています。カスタマーファーストを徹底し、一つひとつの対応スピードを速め、ニーズを吸収する力が強みです」(繁沢氏)

独自AI技術で「少ないデータでも高精度」を実現

単体でも優れたTreasure Data CDPだが、NECの独自技術を組み合わせることで、さらなる競争優位性が実現する。

「従来、今あるデータを基に予測をしていくのがデータ活用のあり方でした。そのためのインフラを整えるとなると、相応の投資と時間がかかっていたわけです。しかし、NECの独自AI技術『オンライン最適化』とTreasure Data CDPの連携によって、低コストかつ素早い見込み顧客の絞り込みが可能となります」(繁沢氏)

オンライン最適化技術は、ユーザーの嗜好が不明な状態からでもパーソナライズできる。つまり、従来の予測分析のように事前に大量のデータを用意しなくても、運用をしながら高精度なパーソナライズドマーケティング(個々の属性や嗜好、行動履歴に合わせて最適なサービスを提供する仕組み)が実現するというわけだ。

さらに、NECが誇る世界トップクラス(※2)の高精度顔認証技術や、虹彩を使った生体認証を共通IDにできる「I:Delight」、使い慣れたIDで複数サービスの利用が可能となる「IDコネクトサービス」などとも連携していくという。

対談風景

「NECは『オンライン最適化』だけで15の特許を取得しています。このようなNECの強い技術だけでもバリューを提供できますが、Treasure Data CDPという顧客データ基盤とデータサイエンティストを組み合わせることで、各技術がより生かされ、お客様とトレジャーデータ、NECの三者がWin-Win-Winとなるソリューションが実現できるようになりました」(繁沢氏)

そのソリューションが、NECの「カスタマーインサイトサービス」だ。Treasure Data CDPの導入からデータ加工、活用支援までワンストップで提供するほか、効果的なユースケースやシステム設計におけるベストプラクティス、技術支援を両社連携して提供する。

「例えばホテルチェーンならば、NECの顔認証などの生体認証とTreasure Data CDPを連携して活用することによって、世界中どこのホテルでも、顧客がホテルに到着した瞬間から、顧客を認識し、現場で顧客情報を連携・活用することで顧客一人ひとりに対し、一貫した顧客体験の提供が可能となるでしょう。

また『オンライン最適化』を活用することで、ほとんど情報のない顧客にも対応できるようになるはずです。もちろんホテルの宿泊客のような一般ユーザー向けにとどまらず“営業の高度化” など、顧客体験向上の余地はあらゆる業界に存在しますので、積極的に協業していきたいと思います」(小澤氏)

老朽化・肥大化したシステムにデータドリブン経営を阻害されているならば、基幹システムの見直しをしながら戦略構築の一助とするのも一つの方法だろう。「顧客データが企業のビジネスの中心に据えられ、あらゆる企業が顧客中心のビジネスを実現できる世界にしたい」と両氏が口をそろえるように、国内有数のシェアを誇るCDPと先進AI技術の融合は、企業のデータドリブン経営を加速させるだろう。

>>NECのカスタマーインサイトサービス 公式サイトはこちら

 

※1 ITR「ITR Market View:メール/Web マーケティング市場 2022」CDP市場:ベンダー別売上金額シェア(2021 年度予測)

※2 *米国国立標準技術研究所(NIST)による顔認証ベンチマークテストでこれまでにNo.1を複数回獲得
https://jpn.nec.com/biometrics/face/history.html

NISTによる評価結果は米国政府による特定のシステム、製品、サービス、企業を推奨するものではありません

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